固定資産課税の概要~大きな負担増を産んだ7割評価

最初に固定資産税制を概観しておこう。固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)現在の土地、家屋及び償却資産(以下「固定資産」という)の所有者に対し、その固定資産の価格をもとに算定される税額をその固定資産の所在する市町村が課税する税金である(4)。

納税義務者は毎年1月1日現在の固定資産課税台帳に登録されている固定資産の所有者である。固定資産税収は平成27年度見通し額では8.62兆円となっており、市町村税収の約42%を占めている(図1)。

固定資産税 図1

固定資産税の標準税率は昭和30年に1.4/100とされて以来、60年もの間、一度も変更されていない。社会経済環境は著しい変化を続けたが、長期にわたって固定資産税収を調整してきたのは、税率ではなく、実は固定資産税評価額と特例に基づく課税標準額である。

この間、固定資産税制における最大かつ歴史的な制度変更は、所謂「7割評価」が平成6年度から導入されたことである。これは、公示地価よりも大きく下回るとされた固定資産評価額を、公示地価の7割の水準を目途に再評価し、課税評価の適正化と均衡を目指して導入された制度であったが、後述のように、不動産の所有者に対し、大きな実質的な負担増をもたらしたと筆者は判断している。

土地の固定資産税に関する主な特例措置は、図1の通りである。負担調整措置は地価の高騰期にも設けられた経緯があるが、地価下落期の「7割評価」の導入に対応し、急激な税負担増を避けるためにも負担調整措置が特例として導入され、緩和措置の基準を調整しながら運用されてきた。

しかし、負担調整措置が設けられたとはいえ、最終的には「7割評価」への移行であるため、長期にわたる継続した地価下落にもかかわらず、その後の税収は、平成6年度当時の税収を上回り、横ばいを維持している。負担調整措置のうち、住宅用地の負担調整は、ほぼ目標を達したとして平成26年に廃止されているが、商業用地についてはデフレ解消を目指す平成27年度税制改正によって継続されている。

小規模住宅用地と一般住宅用地の評価額を軽減する特例制度は昭和48年度に創設されたもので既に40年以上にわたり運用されている。軽減割合は「7割評価」の導入に伴い、負担増を軽減するために前者が4分の1から6分の1、後者が2分の1から3分の1に軽減された(5)。

新築住宅の課税評価における3年もしくは5年の2分の1減額特例は、昭和39年度に創設され、既に50年以上にわたって運用されてきた。小規模及一般住宅用地の特例と同様に、市場に取り込まれており、土地所有者からすれば事実上の本則であり、もはや本則化されるべきものである(6)。