日本の保有税収・総税収比率はOECD最上位である米国の水準まで上昇

OECDの歳入統計を用いてよく指摘されるのは、日本の保有税収(11)のGDP比率は、G7諸国の中では英米加と仏伊独との間に位置し(図3赤線グラフ)、負担がそれほど高い水準にあるとは言えない点である。さらに、総税収のGDP比率を比べ、G7では米国に次いで負担が軽く(図4)、まだわが国には増税余地があるという指摘もある(12)。

固定資産税 図3-4

総税収や各税目の税収のGDP比率は、各国の経済規模に基づき税収を標準化した指標と言える。しかし、所得税や法人税、消費税のように付加価値を形成する利潤や売上・仕入差額に対する課税費目の税収をGDPで除した比率で各国比較することには一定の意味をもつものの、保有税は不動産等の資産価格や租賃貸価額により評価され課される税(13)であるため、そのGDP比率を用いて、各国の負担を比較することには不都合がある。

たとえば、2013年における日本の土地資産額のGDP比率は1.93(14)だが、米国における不動産価額から建築物の再調達価格を差し引いて求めた土地資産額のGDP比率は0.619である。これは日米の国土面積比が0.039であり、圧倒的に日本の利用可能な土地面積が狭いことによる。ドイツやフランスなどの場合、課税標準は古くからの租賃貸価額を見直し、時点・地点調整したものとなっており、課税目的上、一定のルールで課税標準を設けているのに等しい。

このように、各国毎に、保有税の課税標準の土台となる部分には異なる特徴があり、各国別の変化をみる場合はともかくとして、国別の負担の程度を比較する場合、保有税のGDP比率よりも、保有税収の総税収比率の水準や変化から、各国における不動産セクター(不動産等の所有者)に対する負担の水準や変化を比べることの方がより適切と筆者は考える(15)。

経済成長が生じ利潤や付加価値が得られれば、すべての税目の税収は上昇する。各国の不動産市場の特徴は異なるものの、保有税収も上昇するため、不動産セクターだけへの負担増にはならない。しかし、他の税目の税収比率にさほど変化がないのに、保有税の総税収比率(ウェイト)だけが変動した場合は、負担増による価格変動が生じることなる。

この場合に想定される理由は、保有税の制度変更に絶対的変化や他の税目の制度変更(付加価値税等新税の導入や税目別増税等)による相対的変化、不動産市場だけにバブルの形成と崩壊が生じた場合等である。