図5により、G7における保有税の総税収比率の推移をみると、米国では住宅価格の2000年頃からのバブルが保有税の総税収比率を高め、サブプライムショックによる崩壊後の2010年から再び大きく低下したことが分かる(図5青線グラフ)。
バブル崩壊によって、保有税収(16)が他の税目の税収以上に大きく減少した結果、わが国よりも保有税収に大きく依存する税収体系をもつ米国の地方自治体は、デトロイト市等の破綻が報じられたように、極めて困難な状況に直面したことがうかがえる。
日本では、平成6年度(1994年度)に導入された「7割評価」導入の効果が、2000年以降の保有税の総税収比率の12%以上への上昇として明確に出ており、G7では米国に次ぐ比率まで上昇している(図5赤線グラフ)。
わが国における不動産所有者の総税収に対する負担は、「7割評価」導入以降、税収比率において4~5%ほど一挙に上昇した事実が分かる。その比率は米国に次ぐもので、イギリスやカナダを含め、G7他国の税収比率を超えている。増税目的ではないと言いながらも、これほど明白で大規模な増税が行われていたことになる。
ドイツの保有税の総税収比率は2%程度で推移しているのが目立つが、OECD加盟国の中でも最も保有税への依存度は低い。ベルリンなどの大都市部を除けば、保有税の実効税率自体は全般的に低く、筆者によるディベロッパーや住宅所有者へのインタビューでも負担感は少ない。
さらに、保有税のみならず、不動産取引に課せられる流通税や相続税を加えた資産課税の総税収比率をみると(図6)、日本は米国の水準に肉薄し2012年では15.61%と米国の15.24%を超えている。これには足下におけるわが国の相続税強化による増税分は含まれていない。日本の税収構造の中で、不動産セクターに対する諸税の負担感が、様々な特例措置による軽減効果以上に高まっている様子がうかがえる。
米国では1978年の「カリフォルニア州提案13号」や「1980年のマサチューセッツ州提案2.5」のように、公共投資支出などの財源として、固定資産税にあたる財産税の増税が安易に行われたことに対する住民の反対運動と住民投票が各州で行われた経緯がある。最終的には議会を通じて州憲法の改正が行われ、当時における課税評価額の凍結やインフレがあっても年2%以上の課税評価上昇を認めない(マサチューセッツ州は年2.5%以上)いわゆるキャッピング制度が設けられた。
その後もキャッピング制度は他州に伝播し、年率や方法は異なるものの、現在では多くの州において採用されている。米国における財産税の負担は、過去から現在においても、場合によっては投票を通じた住民革命や反抗が顕在化するほどの高水準を維持しており、現状において、国民にとって安易に許容できる水準ではないことを認識しておくべきだろう。
米国の保有税あるいは資産税の総税収比率が適切かどうかは国際比較では判断しにくいが、少なくとも米国はOECD歳入統計にデータを提供している25ヶ国中(17)では最も高水準にある。地方の安定した財政運営を考えるならば、今後、日本の保有税の総税収比率を米国に近づけるようなことは避けるべきではないか。それが税収構造として望ましいものかどうかは十分議論されるべきである。