◆日本における2指標の動き

1975~79年期(第2象限、住宅価格-・税収比変化量+):1972年の列島改造論によって全国的に経済成長を上回る名目地価上昇が続いたため保有税収比率の変化量は73年の評価替えにより76年までプラスとなる。実質住宅価格(土地)の平均変化率は第1次オイルショックによる狂乱物価とも言われるインフレがあったためマイナスとなる。

1980~84年期及び85~89年期(第4象限、住宅価格+・税収比変化量ほぼなし):バブル発生によって実質住宅価格は平均年率4%(実質)を超えて高騰したものの、保有税収比率の変化量は他の税収も伸びる中で、負担調整措置(79年、82年、85年)により安定。

1990~94年期及び1995~99年(第2象限、住宅価格-・税収比変化量+):
バブル崩壊で実質住宅価格は下落。保有税収比率の変化量は「7割評価」導入によって負担調整措置にもかかわらず増加。1995~99年期の保有税収比率の変化量は一段と増え、価格は下落。

2000~04年期及び2005~09年期、2010~13年期(第2象限、住宅価格-・税収比変化量+):保有税収比率の変化量は縮小したが税負担は重たいまま実効税率は上昇。住宅価格は継続下落。

◆米国における2指標の動き

1975~79年期(第4象限、住宅価格+・税収比変化量-):70年代の米国はニクソンショックから始まりブレトンウッズ体制、オイルショック、ベトナム戦争の敗退、社会保障費の増大により、スタグフレーションからの脱却が課題となる。

実質住宅価格はインフレによって1975年を通じてマイナスで変化するが、その後は上昇を続け79年までの平均ではプラスとなる。しかし、当期以前に10数%あった保有税収比率の変化量は、カリフォルニア提案13号の全米への広がりを受けてマイナス。

1980~84年期(第3象限、住宅価格-・税収比変化量-):レーガン大統領が就任し「1981年経済再建税法」を成立させる。住宅価格は景気低迷により実質でもマイナス。保有税収比率の変化量は前期と変わらず。

1985~89年期(第1象限、住宅価格+・税収比変化量+):1981年からの第1期レーガン政権による加速度減価償却の導入の効果が顕在化し、譲渡益が最大限に活かすスキームによって不動産市場は活況を呈した。経済も成長したが、住宅価格は実質でもプラスに転じた。保有税収比率の変化量もキャッピング限度まで上昇。

1990~94年期(第2象限、住宅価格-・税収比変化量+):1986年からの第2期レーガン政権による課税強化、湾岸危機の勃発によって不動産市場は不況に陥る。住宅価格は下落。保有税収比率高止まりし変化量はわずかにプラス。

1995~99年期(第4象限、住宅価格+・税収比変化量-):経済の好況が始まり住宅価格は上昇し高騰に転じる。しかし、95年までの貯蓄貸付組合(S&L)の破綻により、商業不動産市場は低迷。保有税収比変化量はマイナス。

2000~04年期(第1象限、住宅価格+・税収比変化量+):経済成長の中、住宅価格は高騰するが、制度的に保有税収比率の変化量は一定にとどまる。

2005~09年期(第2象限、住宅価格-・税収比変化量+):住宅バブルの崩壊が始まる。平均で実質住宅価格はマイナス。価格高騰が続くとともに地方債償還費の別途上乗せを可能とするキャッピング制度の見直しがあり、税収比率の変化量はプラス。

2010~13年期(第3象限、住宅価格-・税収比変化量-):住宅バブルの崩壊が続き、実質住宅価格はマイナス、税収比率の変化量は横ばい。

日本の場合、1980~84期及び1985~89期では、保有税収負担率が低めで推移し住宅価格(地価)は上昇したため第4象限に分布したが、それ以外の時期は「7割評価」による負担増により価格の下落を伴う第2象限だけに分布していることが分かる。

米国の場合は日本のような保有税自体の大きな制度変更はなかったが、オイルショックの影響を受けた1975~79期及び1981年からのレーガン税制の効果が出た1985~99期に挟まれた1980~84期を除くと、2つの指標の分布は第4象限から左時計回りに展開している様子が分かる。

固定資産税 図8

この分布図によると、保有税収比率の変化量が限りなく0に近く、実質住宅価格がそれほど変化せずに安定して推移する状態が理想的であることが言えよう。

わが国の不動産市場は固定資産税制との関係で言うならば、「7割評価」導入によって長きにわたり、第2象限の分布が続いたが、2010~13年期になると、実質価格の下落は従前よりも落ち着き、保有税収比率の変化も安定してきた。今後も両指標が0に近づくよう、固定資産税制を変化させることなく、経済回復を中心とした施策の展開により増収を図ることが望ましい。

米国も金融危機によって2005~09年期は第2象限に分布することになったが、2010~13年は日本と同様に両指標は0に近づき安定しつつある。