むすびにかえて~今後は経済成長を通じて固定資産税収を確保すべき

本論の冒頭では、デフレの解消のためには、地価下落に結びつく固定資産税など保有税の実効税率の上昇を抑える必要があること述べたが、GDPの一定割合が地代に分配されると仮定するならば、マクロ経済においても、 固定資産税 計算式1 という関係が成り立つ(19)。

ここでPは地価、Lは土地面積、αはGDPのうち地代の占める割合(一定と仮定)、iは代替資産の収益率、gは名目経済成長率(将来期待)、τは土地保有税の実効税率である。この式は、分母において実効税率τをiに加えるのではなく、分子のα・GDP/Lである地代総額相当から保有税収総額であるHtaxを差し引くことにしても同義である。

つまり 固定資産税 計算式2 となるので、理論的には代替資産の収益率iが上昇するか、gの経済成長率が低水準にあるか、Htax(20)ないし保有税の実効税率が上昇すると、マクロベースからみても地価は下落することが説明できる。

これは前述のOECD歳入統計による分析傾向ともほぼ符合する。既に保有税収比率や資産税収比率は、米国に次ぐか上回る水準まで上昇している。米国の水準はOECD加盟国では最大であることから、日本の地方財政は、米国に次いで保有税に依存しているとも言えよう。

したがって、わが国の固定資産税の負担がこれ以上に増すことは、不動産市場の着実な成長や地方財政の健全化という観点からも、回避されるべきではないかと判断される。

これまで長期にわたって継続され、市場に包含されたような特例措置の縮減や廃止は大きな増税となり、不動産価格の下落を促すことから望ましくないし、負担調整措置の撤廃などには経済成長や不動産市場の動向をみつつ、慎重に対応する必要がある。

消費増税は、建物への課税ということから別途様々な検討課題をもたらすが(21)、直接的には固定資産税の税収増や総税収比率の上昇、実効税率の上昇などを伴わず中立的であると言えよう。しかし、法人減税の減資を固定資産税の増税に求めるような対応は、日本における固定資産税収の総税収比率が上昇している現状では望ましくない。

固定資産税については、「7割評価」が事実上、大きな負担を生んだ増税であることと、その重荷からようやく脱却できそうな市場環境が整ってきたことを念頭に、地域の経済成長率を高める方策をとり、不動産価格の安定した上昇によって実効税率を維持しつつ、これ以上市場に新たな負担を加えることなく自然に税収を増やすことが、地方財政運営にとって最適な選択肢と考えられる。