2%の安定的な物価上昇を早期に実現するという日銀の政策コミットメントの果断な実行において、戦力の逐次投入をしないというスタンスが束縛と障害になっていると考えられる。確かに、大軍を投入する前の戦力の逐次投入は、有効な戦略ではなく、効果も小さい。しかし、大軍を投入した後は、戦力はいくらでも逐次投入し、無尽蔵な大軍の力で、敵の戦意(デフレ期待)を失わせることは、有効な戦略で、効果も大きいはずだ。
アベノミクスの政策は、期待に働きかけて、企業活動を押し上げ、その力を使ってデフレ完全脱却に向かう枠組みである。景気の気(センチメント)の部分が、政策などに支えられて堅調なことが、デフレ完全脱却への動きの原動力となっている。
堅調な景気の気の部分に対して実体経済や物価の動きが弱いにもかかわらず、政府が補正予算による景気対策、日銀が追加金融緩和に動かず、2%の物価目標達成までの果断な政策コミットメントが疑われてしまうと、マーケットと企業の失望などにより期待が悪化し、デフレ完全脱却への原動力が失われてしまうリスクとなろう。
アベノミクスは期待に働きかける政策であることを考えれば、2013年4月の量的・質的金融緩和で大軍を投入した後は、グローバルなマーケットの不安定化や拙速な消費税率引き上げなどにより、期待が悪化する恐れがある時は、機動的に戦力を逐次投入し、期待を好転させ続ける必要がある。