注目される10月30日の日銀金融政策決定会合

機動的な追加緩和がなく、マーケットが戦力の逐次投入をしないという日銀の政策スタンスの弱みにつけこむ形で弱くなり、期待が悪化し、株価が大きく下落してしまえば、初期の量の効果も減じてしまい、企業活動が萎縮するとともに名目GDP成長率が低下し、スプレッドが消滅し、アベノミクスが失敗してしまうリスクとなる。

量的・質的金融緩和は二階建て(強さと持続性)になっており、一階は名目GDPと長期金利のスプレッドを持続的にプラスにしリフレの力を強くすること、そして二階は期待を好転させたまま維持しリフレの力を持続的にすることである。一階部分は十分に大きくなければいけないが、どれだけ大きくても、二階がなければ、立派な家には見えない、即ちデフレ完全脱却は成功しないことになる。

もう既に日銀は大規模な金融緩和を行っており、これ以上の緩和の「逐次投入」は必要もないし効果もないというのは、一階部分しか見ていない考え方であると言える。現在の景気・マーケット環境の悪化が期待の好転を止めるリスクが大きくなっていることを考えると、日銀は追加緩和の「逐次投入」をする必要があり、期待を支えるという意味で効果も十分あると考える。

10月30日の日銀金融政策決定会合では、展望レポートで成長率・物価シナリオが下方修正され、「2%の物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」には景気回復と物価上昇のペースが弱すぎることを確認し、追加金融緩和が実施されると考える。

黒田日銀総裁が決意表明しているように「物価安定の目標の達成のために必要とあらば、躊躇なく政策の調整」を行うため緩和をするのか、ECBや中国人民銀行の緩和姿勢によるマーケット環境の改善で、各中央銀行に求められている自立的な判断をせず、既存のシナリオに固執して緩和をしないのか、日銀が試されることになる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

【関連記事】
・「新三本の矢」の有効性に必要なものとはーSG証券チーフエコノミスト・会田氏
・11月4日上場へ!日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の上場を徹底解剖
・日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
・日経新聞/日経MJから、四季報まで全てネットで閲覧可?その意外な方法とは
・証券業界に革命?「独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)」に注目が集まる理由