◯ビルゲイツ氏の引退とネット起業家の急成長

ビルゲイツ氏が初めてランキングの第1位になったのは1995年。以来、2007年まで連続1位を守ってきましたが、2008年に投資家のウォーレンバフェット氏にその座を明け渡します。その後2009年に1位に返り咲きますが、2010年からはメキシコの通信王、カルロススリム氏がランキング1位をとり続けるようになりました。
ビルゲイツ氏の資産額も、2001年の900億ドルをピークに、現在は600億ドル前後に落ち着いています。

そんな中、ビルゲイツ氏は2008年の6月、マイクロソフトの経営の第一線からは退き、事実上の引退をされました。この見方は人によって分かれるかも知れませんが、ビルゲイツ氏の引退は、一つの時代の終わりを象徴しているのかもしれません。それは、コンピューターが道具としての進化を続け、その進化に重きを置かれる時代から、そのコンピューターを使って、何をするのかが重要な時代へと、移り変わると言うことです。

ランキングにもそれは現れており、Googleのサーゲイ・ブリン氏やラリー・ペイジ氏(各々24位)、Amazonのジェフ・ベゾス氏(26位)、facebookのマーク・ザッカーバーグ氏(35位)などニューフェイスの存在が象徴的です。

【参考】

崩壊したソーシャルバブル~バブル崩壊の仕組みと今後の注意点~
2012年にソーシャルバブルが弾けた3つの理由

◯新興国の躍進、資源高と大富豪



現在、億万長者輩出国ダントツの1位はアメリカ425人なのですが、他の国、特に新興国出身の億万長者もその存在感を強めています。特に中国やロシアはその人数、増加スピードともに高く、両国とも2000年にはランキング該当者は0名でしたが、現在はロシア96名、中国95名と多くの億万長者を抱えています。




尚、それに対してアメリカ以外の先進国は微増傾向という所が多いのですが、日本は余り元気がありません。2000年の43人をピークに減少が続き、現在の該当者は24名まで減っています。




また新興国大富豪の特徴ですが、資源や不動産、またインフラ事業などの業種に億万長者が集中するのも特徴的ですね。


この20年、億万長者の世界にはどんな変化があったのか1/3 にて触れた富の浮上現象(一国の経済が大きな成長や変革を迎えるとき、巨万の富を築く人物が多く出る現象)が、現代も続いているのだと言えそうです。これには、世界的な資源高の影響も大きいかもしれません。







◯リーマンショックに欧州危機、混沌とした世界で、ビリオネアから何を学ぶことができるのか




以上、駆け足ではありすが、ここ20年の世界の億万長者の動向を振返ってみました。


あくまで、ここ20年間の変遷でしかないので、確定的なことはいえないのですが、こうして振返ってみますと、億万長者の世界の移り変わりにも傾向があるような気がいたします。




まず億万長者は世界的に増加傾向にあります。しかしバブル期に栄華を極めた我が国の大富豪をはじめ、90年代頭にはランキングに載っていたのに、脱落してしまった元億万長者の方も大勢いらっしゃいます。(※10億ドル以上の億万長者ではなくとも、一般的には充分大金持ちの範疇に留まってはいるでしょうが。)


億万長者の方の資産は、自社株などのケースが多いですので、自身の取り組まれている産業の盛衰に引きづられるのかもしれません。また、所属する国の浮き沈みにも大きな影響を受けるようです。




この間、技術革新や経済成長などの出来事が、多くの億万長者を輩出してきました。しかしそのようなポジティブなことでなくとも、80年代のメキシコや90年代のロシアのように、通貨危機や経済危機の過中においても機を掴むことで、巨万の富を築く方が誕生してきました。ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、経済や社会に大きな変化の起るとき、新たな億万長者が誕生しやすいと言えそうです。




バブル崩壊以降、長期のデフレ不況や財政赤字に喘ぐ日本ではありますが、幸いなことに通貨危機や、政府のデフォルトのような急進的な経済危機を経験すること無くここまで来ました。日本人の億万長者は、人口および経済規模に対して明らかに少ないのですが、これは(良くも悪くも)日本の社会が安定していることの現れかもしれません。


現在世界の経済は、欧州の金融システム不安や日米欧の先進国の停滞などネガティブな要素と、各国で進む起業ブームや、新興国・新興市場の成長などポジティブな要素が混在しています。そしてだからこそ、おそらくは今後も、新手のビリオネアが続々と誕生するのではと思われます。
フォーブスのこのランキングは、今後も目が離せそうにありません。

BY TOMB