12月の注目ニュース、今後の注目点など
◆韓国:2016年経済政策方針を公表(16日)
韓国では、16日に政府が2016年の経済政策の方針を公表した。2016年は国際原油価格の停滞や政府の施策効果によって消費・投資中心で回復し、成長率は3.1%と予想している。
景気回復をサポートするためにも拡張的なマクロ経済政策と緩和的な金融政策を続けるとした。財政政策では、第1四半期に8兆ウォン前倒しで予算執行する。また公的機関の投資を6兆ウォン増加し、PPP(官民パートナーシップ)を通じて民間投資の促進を図るとした。
国内消費拡大に向けては、毎年11月に大規模なショッピングイベントを開催するほか、中国人観光客のビザ発給要件を緩和してインバウンド消費の拡大を促す。また、投資促進策としては住宅や土地開発における規制を緩和するほか、インフラ整備を進めるとした。
韓国の外国人観光客数は、2014年が約1,400万人(2010年比64.1%増)である。観光収入は2014年が180.6億ドル(GDP比では1.3%)と大きいとはいえないものの、中国人観光客の伸び率は2010年比217.8%増と全体を大きく上回り、約半数を占めるまでに拡大している。日本同様、韓国においても中国人観光客によるインバウンド消費は経済を支える好材料となっている。
◆フィリピン:次期大統領選最高裁がポー氏の出馬資格審理へ(28日)
最高裁判所は28日に、5月の大統領選挙に立候補していたグレース・ポー上院議員を失格とした選挙管理委員会による決定を差し止め、1月に審理を始めるとした。選挙管理委員会は12月に、同氏が「10年以上の国内居住歴」や「生まれながらのフィリピン人」とする候補者要件を満たしておらず、「失格」と結論付けていた。
フィリピン大統領選は、現在のところポー氏をはじめジェジョマル・ビナイ副大統領、アキノ大統領から後継者として氏名されたマヌエル・ロハス内務・自治相、11月に所属政党の立候補者の代理で出馬したロドリゴ・ドゥテルテダバオ市長の4名の混戦が続いている。
ポー氏が失格となった場合、浮動票が流れた候補がトップに躍り出る可能性が高いだけに、同氏の出馬資格を巡る動きは注目を集めている。
◆インド:冬季国会でGST法案先送り(23日)
インドでは、23日に冬季国会(11月26日開会)が閉会した。物品サービス税(GST)関連の税制改正法案は、上院では採決が行われなかった。上院で少数派の与党が、過半数を占める野党・国民会議派に歩み寄って可決すると期待されていたが、野党の反対姿勢が強く、上院を通過できなかった。これにより、与党が目指す16年4月のGST導入は難しくなった。
GST法案は構造改革のなかでも注目を集める3つの重要法案のうちの1つである(残り2つは解雇規制の改革、土地収用法改正)。同法案は州毎に異なる間接税(物品税、サービス税、中央販売税、州VATなど)を一本化する内容であり、州を跨いで活動する企業の納税コストを削減することにより、インドのビジネス環境を改善する狙いがある。
今回の先送りは、外国人投資家から構造改革の遅れと評価され、対内直接投資の鈍化に繋がる恐れもある。
◆1月の注目指標:韓国・台湾・フィリピンでGDP公表
1月は、韓国(26日)・台湾(29日)・フィリピン(28日)に10-12月期のGDP統計が公表される。
7-9月期の実質GDP成長率は、韓国が前年同期比2.7%増(前期:同2.2%増)、フィリピンが同6.0%増(前期:同5.8%増)と上昇した。韓国は7月・8月に打ち出した景気刺激策が追い風となって内需が拡大、フィリピンは資源安の恩恵による個人消費が堅調で、予算執行改善による政府部門の拡大も景気を押上げた。
一方、台湾は同0.6%減と前期の同0.6%増から低下してマイナスに転じた。製造業の生産調整で雇用者数や所得の伸びが鈍化して個人消費が腰折れた影響が大きい。
10-12月期は、韓国・台湾では輸出が停滞しているものの、景気刺激策が奏効して回復する見込みである。またフィリピンは引き続き個人消費が堅調を維持し、政府部門の拡大が景気を押上げる構図が続くとみられる。
当研究所では、10-12月期の実質GDP成長率は、韓国が前年同期比+2.9%増、台湾が同+0.4%増と上昇し、フィリピンが5.9%増と横ばいになると予想する。
(*1)政府は8月に消費刺激策として、同月27日から年末までの期間限定で乗用車や大型家電製品に課される個別消費税を引き下げること
を決めた。乗用車の個別消費税は従来の5%から3.5%に引き下げられた。
斉藤誠
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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