消費者物価指数(11月)

11月の消費者物価上昇率(前年同月比、以下CPI上昇率)は、14年後半の資源価格下落による下押し圧力は後退し、タイ・インドネシアを除く国・地域で上昇した(図表5)。

アジア新興経済レビュー4

インドは前年同月比5.4%増と、祭事期に伴う消費需要の増加やモンスーン期(6-9月)の雨不足による一部食料品価格の高騰により3ヵ月連続で上昇した。またマレーシアは消費需要が鈍化しているものの、通貨安による輸入インフレが浸透して小幅に上昇した。

一方、インドネシアは同4.9%増と、14年11月の燃料補助金削減の影響が剥落し、中央銀行のインフレ目標圏内(2015年は3-5%)まで低下した。またタイは農産物の供給量が増加したことから干ばつ被害による生鮮食品の価格上昇が和らぎ、3ヵ月ぶりに低下した。

金融政策(12月)

12月は、韓国・台湾・タイ・インドネシア・フィリピン・インドの中央銀行で金融政策会合が開かれた。政策金利は台湾が引下げ、その他の会合では据え置きとなった。

台湾は17日に、政策金利を0.125%引き下げて1.625%とした。前日の米国の利上げ決定を受けてメキシコや香港、中東諸国等が追随利上げに踏み切るなか、台湾は7-9月期のマイナス成長を受けて2会合連続の利下げに踏み切った。

またインドネシアは、11月の会合でインフレ率や経常収支などマクロ経済環境の安定を材料に先行きの緩和余地を示していたものの、17日の会合では政策金利(BIレート)を7.5%で維持することを決定した。中央銀行は前日の米国の利上げ決定を受けて慎重になったと見られる。

金融市場(12月)

12月のアジア新興国・地域の株価は、韓国・タイ・インドが低下する一方、台湾・マレーシア・インドネシア・フィリピンが上昇するなどばらつきが見られた(図表6)。

アジア新興経済レビュー5

月前半は米連邦準備理事会(FRB)の利上げ決定による新興国からの投資マネー流出が懸念されたことや原油一段安を受けて、アジア株は緩やかな下落基調で推移した。しかし、月後半は米国の利上げで不透明感が和らいだことからアジア株が買い戻される展開となった。

国別に見ると、インドネシアは11月のCPI上昇率が大きく低下し、先行きの利下げ観測が高まったことが株価上昇に繋がった。また中国の中央経済工作会議で景気刺激策の期待が高まったことは韓国・台湾の株価を下支えした。

一方、タイは携帯電話の第4世代(4G)サービス向け電波の割当先を決める競売で価格が跳ね上がり、通信各社のコスト増への懸念が膨らんだことが株価下落に繋がった。

為替(対ドル)は、月前半は12月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ開始が懸念されて軟調に推移し、その後に買い戻される展開となり、月を通しては概ね横ばいとなった。(図表7)。

国別に見ると、マレーシアは石油輸出国機構(OPEC)の減産見送りによる原油一段安が通貨下落に繋がった。インド・インドネシアは通貨当局が為替介入したことや米国の利上げ決定で不透明感が和らいだことなどが通貨上昇に繋がった。

アジア新興経済レビュー6