2008年にスタートしたふるさと納税は、年々利用者が拡大し、現在ではその過熱ぶりが社会問題として取り上げられるほどになった。そのような状況のなか、2017年4月に総務省から全国の自治体に対して、過熱感を緩和させるような通達がなされた。ふるさと納税に何が起こっているのだろうか。このタイミングで今一度、ふるさと納税について考えてみたい。

(写真=PIXTA)
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ふるさと納税に行政のメスが入る

まず、昨今のふるさと納税の状況をおさらいしてみよう。税制面で優遇され、かつ返礼品を受け取れると認知されてから、ふるさと納税を行う人が増加していった。総務省の発表によると、2015年中にふるさと納税を利用した人数は約130万人であり、ふるさと納税が開始された2008年中の利用者約3.3万人から約40倍と急拡大している。

人口減少や高齢化で税収減にあえぐ地方の自治体としても、ふるさと納税は渡りに船であり、ふるさと納税の受け入れを開始および強化する自治体も急増した。そのため、魅力的な返礼品を用意して、たくさんの寄付を集めようとする寄付誘致競争が激化し、自治体によってはプリペイドカードなどの金券や高額の家電品などを提供するようになった。

他方、返礼品目当て、返礼品ありきでふるさと納税を行う人も増加してしまったという指摘が多い。ふるさと納税額を増やそうと返礼品を充実させたために、結果的に赤字になってしまったという自治体もあった。

このような流れを受けて総務省は、2017年4月にふるさと納税についての通達「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」を出した。この通達の概要は以下のとおりである。

・ 返礼品の価格を寄付金額の3割までに抑えること
・ 商品券やポイントなど金銭類似性の高いもの、家電や宝飾品など資産性の高いものなどを返礼品として提供することを控えること

このようなルールは、各自治体を拘束するものではないが、実質上守るように求めていくという。

ふるさと納税の仕組みを理解して原点に帰ろう

総務省のふるさと納税公式ポータルサイトを見ると、ふるさと納税には3つの大きな意義があるという。

第一に、納税者が自ら寄附先を選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になること。第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域、これから応援したい地域の力になれる制度であること。第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進み、結果として地方創生が進むこと。以上がふるさと納税設立の原点と言える。

ふるさと納税は本来、応援したい地方自治体に寄付を行うだけで完了する。居住している自治体に納める税を居住していない自治体へ代わりに納めるようなものである。そのお礼としてその地方の特産物などが送付される。

近年では、ふるさと納税について「ワンストップ特例制度」が実施されるようになった。本来ふるさと納税による税制優遇を受けるためには確定申告が必要だったが、一定の条件によって確定申告が不要になったため、より身近な存在になった。

ふるさと納税によって、東日本大震災をはじめとする災害によって困窮した自治体に、多額のふるさと納税がなされた。こういったふるさと納税は返礼品を辞退する人も多かったという。このように、基本的には地方を応援することを目的としたものであり、返礼品は付随的なものであることがわかる。

ふるさと納税で地方を応援するのは変わらない

総務省が出した通達では、ふるさと納税の返礼についてのルールが策定されたが、ふるさと納税の基本理念である「地方を応援すること」に変わりはなく、あくまでも返礼品目当てにふるさと納税を行う人にとって不利益となる通達である。この通達を受けて地方は返礼品の見直しなどを行っているという。もっとも、この見直しについて反発する姿勢をみせている自治体もあるようだ。

今後さらに規制されていくのかどうか不明なところだが、ふるさと納税で地域を活性化させるという基本理念が大きく変更されることはないだろう。今までふるさと納税を利用していた人も、これから初めて利用する人も、この総務省の通達をきっかけに、いま一度ふるさと納税の原点に戻って、寄付をしてみてはいかがだろうか。

(提供: 大和ネクスト銀行

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