資産形成において、資産を複数地域や複数通貨と組み合わせて形成する、分散投資の大切さはよく知られている。では数ある分散オプションの中で、外貨建て預金が特に日本人向きの有効な資産分散方法であることはご存じだろうか。その理由は、日本人の資産形成における嗜好と外貨建て預金商品の特性にある。今回は外貨預金について考えてみたい。
驚くべき日本人の預貯金率の高さ
日本人は預貯金による基礎資産形成を好むと言われている。それを裏付ける2つの統計は下記の通りだ。 総務庁が2021年5月に発表した2020年『家計調査報告書 (貯蓄・負債編) 』-令和2年 (2020年) 平均結果速報- (二人以上の世帯) によると、一般家庭が金融機関に預けている預貯金・保険・有価証券などの金融資産のうち、64.9%が通貨性 (流動性) または定期性預貯金によって構成されている (2人以上の世帯の場合、2020年) 。
また、他の先進諸国と比べても、資産構成率の中に占める預貯金の割合が高いことが分かっている。 日本銀行がまとめた2021年版『資金循環の日米欧比較』を見てみると、日米ユーロ圏それぞれの預金・現金による資産構成率は、米が13.3%、ユーロ圏が34.3%なのに対し、日本は54.3%と、資産の半分以上が預金または現金で構成されているとの結果がある (2021年3月末) 。
この理由には諸説があるといわれている。例えば1990年代のバブル崩壊後に堅実な預貯金に資産を移したという説だ。または金融リテラシーが他の先進諸国と比べて低いため、投資に対する姿勢が消極的だという説もあるといわれている。もう1つ有力な説は、「備えあれば憂いなし」を実行し、万一に備えて資産の流動性を重視する傾向があるということだ。いつ予期せぬイベントが訪れて資金が必要になっても対応できるよう、数ある金融商品の中でも流動性が高い預貯金に、資産を集中させているのかもしれない。
さまざまな諸説があるとはいえ、ここで大切なのは「日本人が好む資産形成は預貯金である」という、数字に裏付けられた明らかな事実である。
外貨建て預金は流動性の選択肢があり資産の分散も可能
資産分散による資産形成は、リスク、金額、期間など、さまざまな事柄を分散し、それを組み合わせることが大切だ。その分散方法の1つに、通貨 (地域) 分散がある。日本円だけに比重を置いた資産形成は、インフレなどに対するリスクヘッジとして十分とは言いがたく、結果として資産価格変動のリスクにつながるからである。
そこで考えられる金融商品が、外貨建て預金である。外貨建てにすることによって、通貨 (地域) 分散を可能にし、かつ流動性の確保も容易に担保することができる。外貨建て預金というと、一般的に知られているのは米ドルやユーロ建てだが、他にも豪ドルやシンガポールドル建て、トルコリラや南アフリカランド建てなど、多種多様な通貨を預け入れることができる。
さらに外貨建て預金は、円預金と同様に普通預金と定期預金を選択することができる。超短期で流動性を確保しておきたい場合は普通預金、短期、中期での流動性を考慮するなら1ヵ月から選ぶことができる。同じ商品を円建てで預け入れを行う場合よりも金利が有利な場合がほとんどで、為替の変動の仕方によっては為替差益が発生する場合もある。
通貨や満期時の賢い選択でより一層メリットを享受できる
流動性の選択肢や通貨分散によるリスクヘッジ以外にも外貨建て預金のメリットはさまざまだ。特に満期時の選択による複利効果と通貨によるリスクレベルの選択はメリットのひとつだと言えるだろう。また、外貨建て定期預金では満期後の取り扱いを選択できる。その際にお勧めしたいのが元利自動継続である。元本に利息を足して運用に回していくことによって、複利効果が得られるからである。
また、通貨によるリスクレベルの選択も考慮したい。たとえば、米ドルやユーロ建てなど先進国や地域の通貨は比較的にリスクを抑えて運用することが可能だ。一方で南アフリカランドやトルコリラ建てなど、経済への期待は高いが情勢に不安要素がある国の通貨は値動きが激しく、先進国通貨に比べるとリスクが高くなる。自分のリスク許容度と照らし合わせて通貨を選択することが重要だ。
外貨預金は投資信託など他の金融商品に比べる大きく注視するポイントが為替の動きだという点で他の金融商品よりも比較的に取り組みやすい商品のひとつだといえるだろう。円預金とは異なり元本保証ではないものの、将来を見据えて資産形成をしたいと検討しているのであれば、候補の一つとして外貨預金を検討するのも一案ではないだろうか。(提供:大和ネクスト銀行)
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