日本は低金利の状況が続いているので、円預金のままにしておいてもなかなか資産をふやすことができない。そのため、海外資産での運用を検討する人もいるのではないだろうか。海外資産の中でも、外貨預金とFXは、為替差益と金利による収益を目的とする運用商品としてよく比較されている。ハイリスクだといわれているFXも、レバレッジを1倍で運用すればリスクを抑えられるという見方もある。そこで、外貨預金とFXの違いや運用効率について考えてみたい。
外貨預金の特徴
まずは、外貨預金について考えてみよう。外貨預金の主な特徴は、為替の変動によって損益が発生すること、円と外貨の交換には一般に為替手数料 (円を外貨に換える際のレートTTS、外貨を円に換える際のレートTTBの差) がかかることが挙げられる。また、一般的には利息も外貨で支払われる。かつて、外貨預金は為替手数料の高さがネックになっていたが、現在はネット銀行を中心に比較的割安になってきている。
固定利率の外貨定期預金などは預入れ時に損益分岐点の計算ができるので、外貨での運用経験が少ない人でも意識するポイントが分かりやすい。なお、外貨預金は、預金保険機構による保護の対象外だ。そのため、金融機関に万一のことが生じても全額保証されるわけではないことに注意が必要だ。
FXの特徴
次に、FX (Foreign exchange、日本語では外国為替証拠金取引) の特徴についても確認しておこう。FXは一定の証拠金 (保証金) を担保にして、その証拠金以上の取引金額で外国為替 (外国通貨) の売買を行うことをいう。証拠金に対する取引金額の倍率をレバレッジと言うが、1倍から最大25倍まで設定することが可能だ。
例えば、1米ドル100円のとき、証拠金を100万円入れると最大25万ドル (2,500万円) までの取引が可能になる。この時、100万円分買って150万円に値上がりすれば100万円の資金は50万円の利益が出る。一方、100万円が50万円に値下がりすれば、手元にある100万円は50万円の損失を被る。なお、損失分は証拠金から振り替えなければならず、場合によっては大きな痛手になる。
FXは、使い方次第では少額の資金で効率よく資産運用できるが、レバレッジのかけ方によってリスクレベルが異なる投資手法だといえる。
外貨預金とFXの違いとは
外貨預金とFXの特徴について確認したところで、次にそれらを確認してみよう。外貨預金は預入れした外貨が円安にならなければ為替差益を得られない。一方、FXは外貨を売って円を買う取引もできるため、円高でも為替差益を得ることができる。
さらに、FXは外貨ペアでの取引も可能で、ユーロ売り米ドル買いなどの取引も行える。FXには外貨預金のように為替手数料はかからないが、スプレッド (外貨を売買する際の買値と売値との差額) がかかる。ただし、外貨預金にかかる諸経費に比べると総じて割安だ。
FXの中で外貨預金の金利に相当するのが日々発生するスワップポイントだ。スワップポイントは高金利の通貨と低金利の通貨との差で、現在は円金利が低いため、円売り外貨買いの取引を行えばほとんどの場合はスワップポイントを受け取れるが、金利が逆転した場合は支払いに転じるので、値動きをよくみておく必要がある。
また、課税方法の違いにも注意したい。外貨預金の場合、利息は源泉分離課税になるので申告しなくても構わないが、為替差益は雑所得として総合課税の対象となり、確定申告を行わなければならない。FX取引によって生じた利益も同様に雑所得になるが、申告分離課税として確定申告の対象となる。
また、外貨預金は他の総合課税の雑所得と損益通算することもできる。一方、FXは先物取引に係る雑所得等の金額と通算できるが、外貨預金とFXの間では損益通算ができない。いずれも、年収2千万円以下の給与所得者で給与以外の所得が20万円以下の場合は申告不要とされている。
FXは冷静な状況判断が必要
それでは、FXをレバレッジ1倍にした場合のことを考えてみよう。税金のことを考慮しなければ、為替の動きのみに注視すればよいのは外貨預金と同じだ。レバレッジのことを考えなくてもよいため、よりシンプルな運用が可能になる。
ただし、人の心理としてFXで手早く利益が出ると「少しレバレッジを上げてみるか」と自分の投資手腕を過信してしまうこともある。結果として相場が値崩れして損失を被る可能性もあるし、損失を被ったときに取り返そうと躍起になれば、損失が膨らむ場合もある。つまり、気持ちを加熱させず、冷静に状況判断し、運用を進める力が必要になる。
安定的に運用したいなら外貨預金、ハイリスクでもリターンを求めるならFXということを念頭に置き、リスク分散を行うのが望ましいのではないだろうか。(提供:大和ネクスト銀行)
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