世界三大投資家として名を馳せるのみならず、オートバイと車で世界一周をした冒険投資家としても知られるジム・ロジャーズ氏の投資動向は、未だに市場者の注目を集める。

そのロジャーズ氏の最大の投資対象は、潜在性のあるベンチャー企業や成長が見込める新興国の株式でもなく、2人の娘だという。愛娘が自分たちの力で人生を切り開いていけるように十分な教育機会を与えるために、その投資を惜しまない。その教育方法から得られる投資のヒントとは何か。

6つの貯金箱を与えるのはなぜ ?

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(写真=PIXTA)

ロジャーズ氏の愛娘に対するお金の教育は非常にユニークだ。お手伝いをした子供に、ご褒美としてお小遣いを渡すのはよくある話だろう。しかし一般家庭と異なるのは、居住するシンガポールドルだけではなく、米ドルや中国元など世界各国の通貨に分けて渡している点だ。お小遣いを受け取った娘たちは、6つの貯金箱にそれぞれの通貨を分け入れて貯めていく。そして、貯金箱がいっぱいになったら、一緒に銀行へ行って彼女たちの口座に入金をしているという。利子がついた場合には、銀行口座の明細書を示しながらお金について教えてお金との付き合い方を教えているわけだ。

幼い頃から世の中には自国以外にも様々な通貨が存在するということを肌で感じさせ、世界を知るための機会を提供していると推察される。

ロジャーズ氏の生き方から学べること

ロジャーズ氏は、伝説的な米投資会社クォンタム・ファンドを著名投資家ジョージ・ソロス氏と1973年に共同設立し、10年足らずの間に4000%を超えるリターンを叩き出した実績を持つ。同ファンドにおける運用手法は、国際情勢を分析して大胆なポジションをとる「グローバル・マクロ」と呼ばれているもの。世界中で起こっている出来事の分析が出来なければ実践できるものではない。

そして、37歳で引退して以降は、2回の世界一周旅行でさらに見聞を広げてきた。近年は、中国やミャンマー、ロシア……といった世界各国を投資対象として注目していることでメディアを賑わせてきた。特に中国に対する熱の入れようは投資だけにとどまらない。米国生まれのロジャーズ氏が、2人の愛娘に中国語を学ばせるために、シンガポールへ移住するほどだ。
このようにロジャーズ氏は、現役時代には世界情勢を捉えて投資利益を上げ、引退してからは世界各国を冒険し、様々な国の資産に投資を行い、利益を上げてきた。移住する国さえも変えるほどだ。

自国にとらわれず、中長期目線で世界の時流をつかみ、投資の利益を得てきた彼の人生を振り返ると、6つの貯金箱には、視野を広げ、自国だけにとらわれすぎるのではなく、時流を捉えた行動の重要性を伝えたいという娘への想いが込められているのではないだろうか。

世界的な投資家の投資教育を参考にしてみては ?

ロジャーズ氏ほどの著名な投資家となれば、その投資資金がどこに向かうのか、同じ潮流に乗って利益を上げたいと短絡的に考えてしまいがちだが、それよりも、同氏が最大の投資対象と位置付ける娘への教育方法にこそ、投資のヒントが隠されているのではないだろうか。

ロジャーズ氏の発言をご紹介しよう。 (『世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60 』 (2015年8月7日 プレジデント社) より)

「他人が目もくれない場所にチャンスは転がっている」

他人が注目していない対象だからといって、必ずしも魅力がないというわけではなく、その潜在性が認識されていないだけであるのかもしれない。視野を広げ、チャンスを掴みにいく積極性の大切さを示唆しているのではないだろうか。

ロジャーズ氏の娘たちのように、幼少期から外貨に馴染む環境ではなくとも、大人になって海外旅行で外貨に接する機会もあるだろう。運用手段として心理的なハードルが立ちはだかるかもしれないが、ロジャーズ氏の貯金箱の話を思い出し、世界各国への投資に関心の幅を広げてみてはいかがだろうか。(提供:大和ネクスト銀行

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