投資信託を評価する指標が変わりつつある。きっかけは2017年10月に金融庁が公表した金融レポートに「インベスターリターン」が登場して注目を集めたことだ。ファンドの運用実績を表す場合はトータルリターンを使用することが多い。しかし実際に投資家が取引して得ている利益とは異なる。その投資家収益をあらわすのがインベスターリターンだ。

インベスターリターンとは ?

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(写真=create jobs 51 / Shutterstock.com)

インベスターリターンとは不特定多数の投資家が実際に手に入れたリターンの平均値のようなもの。投資信託をいつ買い、いつ売るかは投資家によって違う。そういった実際の投資行動を反映した指標になっている。

日々のファンドへの資金流出入額と、期首および期末のファンドの純資産総額から求めた内部収益率を年率換算したものだ。金額加重収益率や金額加重リターンとも呼ばれ、ファンドに資金が流入した時期の比重を高く、資産が流出した時期の比重を低くしている。

資金が入ったあとに基準価額が上昇すればインベスターリターンは大きく上がり、下落すれば大きく下がるというわけだ。

トータルリターンとの違いは ?

トータルリターンは投資信託がある期間にどれだけ値上がりしたかをあらわす。分配金もすべて再投資されると仮定し、販売手数料を差し引いて計算する。保有し続けた場合のリターンをあらわしているともいえる。投資信託の運用成績と捉えられ、ファンドマネージャーの運用スキルを評価するのに使える。

インベスターリターンそのものは不特定の投資家全員の損益を平均化したもので、個人の損益はばらつきがある。販売手数料も含まれていない。またインベスターリターンが高いかどうかも投資信託の運用成績と直接には関係ない。

トータルリターンでは投資信託の運用による結果をみることができ、インベスターリターンはそれに投資家による売買を加味したものということになる。投資信託を売り買いする投資家や販売している金融機関の動向をみることができる。

トータルリターンとインベスターリターンとの差に注目する

インベスターリターンもトータルリターンも投資信託からの利益を表していて相関性もある。しかし互いが一致せず差があることに注目して投資家の動向をみていきたい。

トータルリターンよりインベスターリターンの値が大きくなるときは、投資家がうまく儲けられているということだ。いいタイミングで売り買いできている投資家が多いということになる。反対に、トータルリターンよりインベスターリターンが低い場合には、多くの投資家が高い時に買い、安い時に売ってしまっていると判断することができる。値動きだけを見て、低くなると不安になって売却してしまうと考えられる。投資家の売買タイミングが意図せずに失敗していて保有したままの利益より低くなっているのだ。

積立投資では資金投入の時期を分散することで、相場の状況に左右されることなく計画的に購入し、高値掴みのリスクを軽減していると考えられる。積立で投資するDC向けの投資信託ではそれ以外の一括で投資するものと比べて長期間でのインベスターリターンが上回る調査結果もある。

インベスターリターンの情報はモーニングスターのサイトに公開されている。個別ファンドのページで「リターン」から「インベスターリターン」で見られる。
http://www.morningstar.co.jp/FundData/DetailSearch.do

他の投資家の投資行動を参考にする

インベスターリターンは投資家に対する平均リターンを示した指標だ。投資信託の成績を直接あらわすものではないが、投資家の動向や傾向を知ることができる。トータルリターンとの差をみることで投資家がうまく売り買いできているかを判断するのにも役立つ。運用成績のリターンも大事だが、投資家として実際に得られているリターンもみることで投資信託を総合的に判断する上で参考にしてみてはいかがだろうか。(提供:大和ネクスト銀行

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