安倍晋三前総理が退陣を表明した直後、日経平均株価は大きく下落した。安倍政権は株式市場を強く意識した政策を進めてきたが、実際の株価はどのような動きだったのだろうか。また、戦後の歴代総理を取り上げ、株価の上昇や下落の要因について探っていく。
政権によって株価の上昇率に差はあるのか ?
戦後における歴代総理の中で、在任中に最も株価が上昇したのは佐藤栄作氏だ。日本経済が戦後の高度成長期を迎えた時期に当たる1964年11月~1972年7月の在任期間中に、日経平均は3.07倍 (騰落率:207.1%) の上昇を遂げた。
歴代2位は中曽根康弘氏 (在任期間:1982年11月~1987年11月) の2.89倍 (188.6%) だ。1985年のプラザ合意で急速に円高が進むというハンデが背負いながらも、国鉄 (JRグループ) ・日本電信電話公社 (NTTグループ) ・日本専売公社 (JT) ・日本航空の民営化を実施し、政権の後期には後にバブルと呼ばれる日本経済の拡大期が訪れた。
これに対し、株価的には不名誉な結果となってしまったのは森喜朗氏 (在任期間:2000年4月~2001年4月) で、騰落率は−31.7%である。ITバブルが崩壊した時期と重なってしまったことは確かに不運ではあった。しかしながら、失言を繰り返して支持率が低迷し、マスコミから森氏の氏名の音読みにかけた「蜃気楼内閣」と揶揄されたのも確かだ。
森氏に次ぐワースト2位は海部俊樹氏で、騰落率は−28.1%である。在任期間が1989年8月~1991年11月と、就任から約4ヵ月後にバブルが崩壊したのだから、こちらも不運だといえる。国民からの支持率も高かったが、目玉の政策だった政治改革関連法案が廃案に追い込まれ、自民党内の派閥による圧力で退陣を余儀なくされた。
ワースト3位、騰落率が−26.3%の福田康夫氏 (在任期間:2007年9月~2008年9月) は、世界的な経済危機に翻弄されてしまった格好だ。就任した年の年末には米国でサブプライム住宅ローン危機が表面化し、事態は深刻化の一途を辿って退陣直前にはリーマンショックまで発生した。
自ら株価を下げるような政策を打ってしまったケースもある。ワースト4位、騰落率が−20.5%の橋本龍太郎氏 (在任期間:1996年1月~1998年7月) は、景気回復の兆しが見られたタイミングで消費税引き上げなどの国民負担増を敢行しており、これがデフレの長期化 (失われた20年) を招いたと批判する識者も少なくない。
在任期間は戦後最長 ! 株価上昇率は歴代3位の安倍晋三氏
2020年9月16日に退任した安倍晋三前総理は、連続在任期間が歴代トップとなった。就任直後から海外の投資家はアベノミクスに大きな期待を寄せ、2012年秋からの累計で日本株を一時20兆円超も買い越した。
振り返ってみると、安倍氏の在任中 (在任期間:2012年12月~2020年9月) に日経平均は2.33倍 (騰落率:132.9%) の上昇を遂げている。これは戦後の政権で歴代3位となる結果だ。
有効求人倍率についても、在任中に1倍を大きく超える水準まで改善している。しかしながら、その一方で2013年第1四半期~2019年第4四半期におけるGDP (国内総生産) の平均伸び率は0.9%にとどまっている。
在任中には、公的年金の運用を手掛ける年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が日本株のウエートを高めた。その収益率は以下のとおりである。
- 2013年度:8.64%
- 2014年度:12.27%
- 2015年度:−3.81%
- 2016年度:5.86%
- 2017年度:6.9%
- 2018年度:1.52%
- 2019年度:−5.2%
平均すると3.74%で、この間に運用資産額は2012年度の120兆4,653億円から150兆6,332億円に増えている。
二度の消費税引き上げが景気の足を引っ張った形跡もうかがえ、政策の成果についてはまだら模様になっているとも受け止められよう。その一方で、歴代総理就任期間の株価を見渡してみると長期政権下で株価は上昇しやすい、逆にいえば短命政権下では上昇しにくいという傾向が見てとれる。
政権・政策を考慮しながら最適な日本株投資戦略を !
新たに発足した菅政権については、短命に終わるとの観測も出ているものの、河野太郎大臣が行政改革に関して強烈なリーダシップを発揮し始めていることや、新設されたデジタル庁によるDX (デジタルトランスフォーメーション) の推進などへの期待も高まっている。
政策の中身や世の中の期待などを見極めながら、日本株の投資戦略を練っていくと良いだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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