「ホームカントリーバイアス」という言葉がある。投資家が海外投資に慎重になり、総資産に占める自国資産への割合が高くなることだ。ホームカントリーバイアスが起こる理由はいくつかあるが、その一つに「海外資産のことをよく知らないので魅力もわからない」というものがある。

しかし、その理由で貴重な投資機会を逃しているとしたら、とても残念なことだ。今回は世界の基軸通貨であり、海外資産の代表である「米ドル」の歴史とその魅力について解説する。

米ドルの歴史

米ドルの歴史を知れば魅力がわかる ? 236年の歴史に迫る
(画像=takadahirohito / stock.adobe.com)

米ドルが使われるようになったのは1785年。236年の歴史を紡いできた米ドルは、現在基軸通貨としての地位を確立している。

大英帝国時代から第二次世界大戦直後までは、イギリスのポンドが世界の基軸通貨であった。では、なぜ米ドルが現在の地位 (基軸通貨) を築けたのだろうか。

その理由として、大英帝国に陰りが見え始めた19世紀末以降、米国が工業国としての地位を確立したことに加えて、ヨーロッパ・アジアと隔絶した場所にあったことが挙げられる。その地理的特徴により、第一次世界大戦でも第二次世界大戦でも直接的な被害を免れた。さらに工場を稼働させ、交戦国に軍事物資を輸出することによって、その対価として金 (ゴールド) を大量に蓄えることができたのだ。

その金を背景に、第二次世界大戦中の1944年、世界経済を安定させるために米国のブレトン・ウッズに各国代表を集め、1米ドルを金35オンスと交換できるようにした。さらに、各国通貨と米ドルの交換比率を一定に保つ固定相場制を定め、米ドルを世界の基軸通貨とした。これを「ブレトン・ウッズ体制」もしくは「金・ドル本位制」と呼ぶ。米ドルと金の交換はすでに停止されているが、米ドルが世界の基軸通貨であることは現在まで変わっていない。

基軸通貨であるということは、通貨価値の「信認」と「利便性」において、他の通貨よりも勝っているということに他ならない。ここで言う信認と利便性とは、「為替相場や金利が安定しており、売買したい時にいつでも取引相手が見つかる」という意味だ。

少なくとも現在は、米ドルに代わって基軸通貨になり得る通貨は見当たらない。他の通貨と比べて、「信認」と「利便性」において米ドルは圧倒的な強さがあると言えるだろう。

米ドルを保有する魅力

では、今後の米ドルの展望はどうだろうか。

一般論として、自国の経済が拡大していくときは、自国の国債や自国企業の株式を買おうとする海外投資家が増えるので、為替相場は自国通貨高になりやすい。日本から米ドルに投資する投資家にとっては、米ドル高によって為替差益が発生するため望ましいシナリオと言える。

では、米国経済は今後どうなっていくのだろうか。結論から言えば、中長期的には今後も伸び続ける可能性が高い。

第一の理由として、人口が増え続けることが挙げられる。国連が発表している「世界人口推計 2019年版」によると、米国の人口は以下のようになるという。

2019年  3億2,906万5,000人
2030年  3億4,964万2,000人
2040年  3億7,941万9,000人
2050年  4億3,385万4,000人

今後、約30年かけて1億人以上も人口が増える想定だ。経済成長を決める要因は、労働投入、資本投入および生産性であると言われている。実際は人口構成 (年齢構成) によっても変わってくるが、人口が増えると労働投入と資本投入が増えて、経済が拡大する可能性が高い。また内閣府によると、人口が増えると生産性も高まるという。

第二の理由として、最新技術を持つ企業の多くが米国に存在 (上場) していることが挙げられる。グーグルやアップル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトといった巨大IT企業に加えて、電気自動車メーカーのテスラやコロナ禍のコミュニケーションツールとして不可欠な存在になったズーム、拡大を続ける暗号資産の取引所であるコインベースなど、次世代の有望企業も米国に集まっている。今後も彼らが生み出すイノベーションが米国に人材や投資マネーを呼び、米国の持続的な成長に寄与するだろう。

資産の一部を米ドルで持つという選択肢

米ドルの歴史を振り返り、今後の展望を予測すると、米ドルは魅力的な資産であり続ける可能性が高いことがわかる。加えて世界的な視点から見ると、米ドルは日本円よりも信頼できる通貨と言えるだろう。

多くの日本人投資家は「ホームカントリーバイアス」によって保有資産の大部分が日本円ベースだが、その一部を米ドルで保有してみてはいかがだろうか。

(提供:大和ネクスト銀行


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