菅政権は約1年で終わり、2021年10月に岸田政権が発足した。しかし、「岸田政権も短命に終わる可能性が高い」という声が早速出てきている。岸田政権が今後どうなるかはわからないが、過去の長期政権後の株価動向を振り返ることは、今後の投資戦略を立てる際の有益な情報になるはずだ。
そこで今回は、過去の政権の騰落率を振り返り、2022年の株価動向を占ってみることにしよう。
過去の政権の騰落率は ?
まずは、2000年以降の総理大臣在籍期間の日経平均株価とTOPIXの騰落率を紹介しよう。
<日経平均株価>
首相の名前 (敬称略) | 在籍期間 | 就任時の日経平均株価終値 | 退任時の日経平均株価終値 | 騰落率 (小数点第2位以下を切り捨て) |
---|---|---|---|---|
森 喜朗 | 2000年4月5日 ~2001年4月26日 | 20,462.77円 | 13,973.03円 | -31.7% |
小泉 純一郎 | 2001年4月26日 ~2006年9月26日 | 13,973.03円 | 15,557.45円 | 11.3% |
安倍 晋三 | 2006年9月26日 ~2007年9月26日 | 15,557.45円 | 16,435.74円 | 5.6% |
福田 康夫 | 2007年9月26日 ~2008年9月24日 | 16,435.74円 | 12,115.03円 | -26.2% |
麻生 太郎 | 2008年9月24日 ~2009年9月16日 | 12,115.03円 | 10,270.77円 | -15.2% |
鳩山 由紀夫 | 2009年9月16日 ~2010年6月8日 | 10,270.77円 | 9,537.94円 | -7.1% |
菅 直人 | 2010年6月8日 ~2011年9月2日 | 9,537.94円 | 8,950.74円 | -6.1% |
野田 佳彦 | 2011年9月2日 ~2012年12月26日 | 8,950.74円 | 10,230.36円 | 14.2% |
安倍 晋三 | 2012年12月26日 ~2020年9月16日 | 10,230.36円 | 23,475.53円 | 129.4% |
菅 義偉 | 2020年9月16日 ~2021年10月4日 | 23,475.53円 | 28,444.89円 | 21.1% |
<TOPIX>
首相の名前 (敬称略) | 在籍期間 | 就任時のTOPIX終値 | 退任時のTOPIX終値 | 騰落率 (小数点第2位以下を切り捨て) |
---|---|---|---|---|
森 喜朗 | 2000年4月5日 ~2001年4月26日 | 1,695 | 1,359 | -19.8% |
小泉 純一郎 | 2001年4月26日 ~2006年9月26日 | 1,359 | 1,549 | 13.9% |
安倍 晋三 | 2006年9月26日 ~2007年9月26日 | 1,549 | 1,576 | 1.74% |
福田 康夫 | 2007年9月26日 ~2008年9月24日 | 1,576 | 1,167 | -25.9% |
麻生 太郎 | 2008年9月24日 ~2009年9月16日 | 1,167 | 931 | -20.2% |
鳩山 由紀夫 | 2009年9月16日 ~2010年6月8日 | 931 | 858 | -7.84% |
菅 直人 | 2010年6月8日 ~2011年9月2日 | 858 | 769 | -10.3% |
野田 佳彦 | 2011年9月2日 ~2012年12月26日 | 769 | 847 | 10.1% |
安倍 晋三 | 2012年12月26日 ~2020年9月16日 | 847 | 1,644 | 94.1% |
菅 義偉 | 2020年9月16日 ~2021年10月4日 | 1,644 | 1,973 | 20.0% |
長期政権後は荒れやすい ?
2000年以降の歴代政権の中で「長期政権」といえるのは、小泉政権 (2001年4月26日~2006年9月26日) と第二次安倍政権 (2012年12月26日~2020年9月16日) の2つだろう。
小泉政権の後は、1年前後の短期政権が6代続いた。第二次安倍政権を引き継いだ菅政権も約1年で終わってしまったため、上記のデータを見る限りは「長期政権の後は短命政権に終わる」という懸念があるのも頷ける。
それでは、短期政権における株価動向はどうだろうか。一般的に、短期政権は株価の重石といわれている。政治が安定しないと的確な経済政策を実行できないため、経済成長の鈍化を連想させ、株式市場に資金が流入しにくくなるからだ。
小泉政権の後の6代は、政権ごとに見れば濃淡はあるものの、6代全体では株価が大きく下落している。小泉政権が終わった2006年9月26日の日経平均株価は15,557.45円だったが、野田政権が終わった2012年12月26日の日経平均株価は10,230.36円だった。
「途中でリーマン・ショックを経験している」というエクスキューズはあるものの、政治の不安定さからリスクマネーの受け皿として日本株が選好されにくかったといえるだろう。
一方、第二次安倍政権の後の菅政権は約1年であったが、株価は約20%の上昇を記録している。こちらもコロナ危機に対する世界各国の財政出動や各国中央銀行の金融緩和があったことを差し引く必要があるかもしれないが、上記データを見る限りは「長期政権の後の株価は上にも下にも振れやすい」と、どちらとも言える状況だ。
岸田政権の2022年の株価はどうなる ?
それでは、岸田政権の2022年の株価はどうなるのだろうか。その鍵となるのが、海外投資家の動向だ。日本株は海外投資家の動向に左右されやすく、海外投資家からどのような評価を受けるかによって、株式市場に入ってくる資金量が変わるからだ。
過去のデータを見る限り、海外投資家から高く評価されたのは第二次安倍政権といえる。菅政権が短命ながら株価を大幅に上げたのは、第二次安倍政権の路線を踏襲したことと無関係ではないだろう。
岸田政権も第二次安倍政権や菅政権の路線をおおむね引き継げば、海外投資家から「首相は変わったものの、日本の経済政策は比較的一貫している」という評価を受けて、株価が堅調に推移する可能性は十分ある。
ただし、岸田政権が独自色を強めた場合は警戒が必要だ。すでに撤回しているものの、岸田首相が総裁選で公約に掲げた「金融所得課税の見直し (増税) 」のように、「株式市場ウケ」が悪い政策を推し進めようとしたり、第二次安倍政権や菅政権とは大きく異なる方向に舵を切ったりすれば、海外投資家からの支持を得られず株価が低迷する可能性もある。
鍵となるのは海外投資家の動向
過去の政権における株価の騰落率を振り返り、2022年の株価動向を占ってみた。鍵となるのは、海外投資家の動向だ。「長期政権では株価が大幅に上昇する」というわけではないが、基本的には政治の安定を求めているといえるだろう。海外投資家が評価するポイントと岸田政権の政策を把握して、2022年の資産運用に活かしていこう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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