少子高齢化の加速で年金制度はいずれ崩壊するのではないか──。こうした不安が広がりつつある。本当に崩壊すると、何が起きるのだろうか。受け取れる額が大きく目減りする場合、一個人としてどのような対応策が考えられるのか、考察していこう。
日本の年金制度に関する不安
日本の年金制度を取り巻く状況は非常に厳しい。少子高齢化が最も大きな課題だが今後、年金未納者が増加したり、支払い世代の海外転出が加速したりすることによって、年金制度そのものの存続が厳しくなる恐れがある。
少子高齢化
日本ではさらなる高齢化の加速が予測されている。内閣府の高齢社会白書によれば、2021年10月時点の日本の高齢化率 (65歳以上の割合) は28.9%で、2025年には30.0%、2050年には37.7%に達する見込みだ。
少子化も進む中、65歳以上の高齢者1人を支えるための生産年齢 (15~64歳) 人口は、1970年ごろまでは10人以上 (=高齢者1人を10人以上で支えていたということ) だったが、2021年10月時点では2.1人、そして2025年には1.9人、2050年には1.4人になっていくと推計されている。
こうした状況では、年金制度に占める支払い世代の割合が減っていき、制度の厳しさが増す。
年金未納者の増加
現時点においては、年金の納付率は右肩上がりの状況にある。しかし、年金制度に対する不安が高まれば、未納者が増える可能性がある。
未納者が増えれば、将来的に受給資格を得る人が減ったり、支給額が減ったりするため、原資と支払い額のバランスが保たれるように感じるかもしれないが、制度そのものの存在価値に疑問符がつき、年金制度の崩壊を加速させる可能性は高まるだろう。
支払い世代の海外転出
グローバル化が進む中、海外に住む日本人の数が増えている。日本の人口が減り続けているのに、海外に住む日本人が増えているのは、年金制度にとってはゆゆしき状況だ。海外転出届を出して国民年金の加入資格を喪失する人が増えると、年金の原資が少なくなっていく。
前述のように原資と支給額のバランスが保たれるように感じるかもしれないが、やはり制度の存在自体が議論になるようになっていくだろう。
もし年金制度が「崩壊」したら…
年金制度が実際に崩壊したら、どのようなことが起きるのだろうか。
支給額がゼロになる可能性
支給額がゼロになることは、基本的にはあり得ないはずだ。年金資産は分散投資などによって低リスクで運用されており、支払い原資がゼロになることはないからだ。
受給額が減る可能性
受給額が減る可能性はある。直接的な月額の受給額の減少のほか、支給開始年齢が引き上げられていけば、結果的に生涯給付額は少なくなる。
インフレによる影響が高まる可能性
年金の支給額は、インフレ率 (物価上昇率) を加味して決められているが、支払い世代の負担が増えることでインフレ分を上乗せして年金を支給することが難しくなり、上乗せ率が実際のインフレ率よりも低くなると、受け取る年金の購買力は下がることになる。
そのときに備えるために何をすべき ?
こうしたことに備えるために、今からできることは何だろうか。
いまから支出を減らして資産を増やす
将来に備え、資産を増やすよう努めるのは重要な視点だ。収入を増やすことはすぐにはできなくても、支出を減らすことは工夫次第ですぐに可能である。最近は、サブスクリプションサービスの解約忘れなどで余計なコストが毎月発生している例も目立つ。
堅実なリターンが見込める資産運用を行う
投資によって資産を増やすという視点も持っておきたい。資産を目減りさせるリスクが小さめで、かつ堅実なリターンが見込める資産運用を早期に始めれば、将来的な受給額の減少を自らの資産運用でカバーできる。
一般的にリスクが低めの投資方法としては、分散投資の効果があるインデックス型投資信託への投資、信頼度が高い国が発行する国債への投資、保有しているだけで金利収入 (インカムゲイン) が期待できる外貨預金を一定割合保有する方法などが挙げられる。
そしてこれらの投資を「一括型」ではなく「積み立て型」で行えば、投資時期の分散によってさらにリスクを低くすることができる。ただし、堅実なリターンが見込める投資であれば、運用期間が長ければ長いほど有利なため、最初に一定規模の額を資産運用に投じることも検討したい。
より生活費がかからない国に引っ越す ?
年金額が減る可能性を考慮して、より生活費がかからない国に引っ越すというアイデアもある。ただし、こうした国に引っ越すべきだと言いたいわけではなく、こういった案も早めに考えておくに越したことはない、ということだ。
備えあれば憂いなし
「年金制度の崩壊なんて起きるわけがない」と思っている人も少なくないかもしれない。しかし、想定外のことが起きるのが人生だ。もしもの時に備えて、今からできることをしておきたい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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