突然の病気やケガでの入院、認知症による施設への入居などでペットの飼育が困難な状況に陥ってしまうシニア層は少なくない。こうした状況に陥った場合に備えて、ペットを飼うすべての人に「ペット後見」という取り組みをぜひ知っておいてもらいたい。
本記事では、ペット後見の仕組みや手続き方法、かかる費用などについて解説する。飼い主として最後まで責任を果たすためには、万が一の事態に備えた事前の準備が大切である。
ペット後見とは ?
ペット後見とは、飼い主が万が一ペットを飼い続けられなくなった場合に備え、飼育費用や飼育場所、支援者・サポーターをあらかじめ準備・コーディネートしておき、不測の事態においても最後まで飼育責任を果たすための仕組みを指す。
これまでも、自分に何かが起きたあとでも愛犬や愛猫が幸せに暮らしていけるよう、金銭面を含めてさまざまな準備を行っていた人たちはもちろんいた。一方で、近年ではアニマルウェルフェア (動物福祉) に対する意識の高まりを背景に、「ペット後見」という仕組みに対するニーズが増え、関連サービスにも注目が集まっている。
ペット後見の進め方
基本的にペット後見は、飼い主がペットを飼えなくなり引き受け手となってくれる親族や知人がいない場合 (もしくはいなくなる可能性が高い場合) に利用ニーズが生じる。
では、具体的にペット後見を利用するためには、どのような手続きが必要になるのだろうか。ここでは、4つのステップに分けて、その流れを説明する。
① 相談拠点を探して問い合わせる
自分が住んでいるエリアで、ペット後見の相談ができるところへ問い合わせるのが最初のステップだ。地域によって行政書士事務所や弁護士事務所、特定非営利活動法人などが相談の受け皿となっている。
ただ、ペット後見に対応している行政書士事務所や特定非営利活動法人などは決して多くはない。そのため、インターネットで調べても見つからない可能性もある。その場合は、自分が住んでいる地域の動物病院や保護猫カフェなどを頼って情報を教えてもらうことも選択肢の一つだ。
② 飼えなくなったあとの飼育方針を決める
相談後は、契約書を作成するために「飼い主が飼えなくなった場合のペットの今後の飼育方針」を決める段階に進む。
例えば、老犬老猫ホームや介護型ペットホテルといった施設で終生飼育をしてもらうのか、それとも新しく飼い主となってくれる人を探すのかなど、具体的な方針を考える必要がある。こうしたことをしっかりと決めておくことで、ペットが安心して暮らせる環境を確保することができる。
③ 飼育費用や委託施設について決める
ペット後見の仕組みを利用する際には、当然ながら費用が発生する。そのため、飼育費用をどのように遺すかを決めておくことが重要だ。例えば、生前贈与や信託、遺言などの方法を選択する必要がある。
また、自分が飼育できなくなったあとに施設で終生飼育をしてもらう場合には、事前に委託先となる施設を見学し、選定することも大切だ。老犬老猫ホームや介護型ペットホテルは全国各地に存在するものの、数は限られているため、慎重に選ぶことが求められる。
以下の点に注意して、施設の選定を行いたい。
- 獣医師が365日24時間常駐しているか
- ペットが過ごすスペースが清潔で、快適に過ごせる開放的な環境であるか
- 施設の評判や口コミに問題がないか
④ 終生飼育契約などの契約書を作成する
③を決定後、相談拠点の仲介などにより飼育施設などと終生飼育契約を正式に結ぶ形となる。
上述した4ステップは、いずれの場合でも手続きにある程度の時間を要するため、早めに準備を始めることが大切だ。スムーズに進めるためにも、可能な限り早い段階で動き出し準備を整えておくことがペットの未来を守ることにつながる。
ペット後見にかかる費用は ?
ペット後見にかかる費用は、「飼えなくなったあとの飼育方針」や「どのような飼育施設に預けるか」によって変動する。例えば、老犬老猫ホームや介護型ペットホテルで終生飼育を依頼する場合、年間の費用は60万~100万円程度が一般的だ。預ける期間が5年となると、総額で約300万~500万円が必要となる計算だ。
また、新しい飼い主を探す譲渡の場合、犬種・猫種やサイズに基づいて一律の金額が設定されていることが多く、100万円程度の費用がかかることが多い。この費用は、譲渡が決まるまでの飼育費やフード代、医療費、施設の維持費などに充てられる。加えて、施設によっては入会金や事務手数料が設定されている場合もある。
さらに、ペット後見の受け入れ施設をサポートするために月会費を一定期間支払うことで、通常よりも低めの金額で終生飼育を受け入れている施設も存在する。
今のうちからお金の準備も含めて備えを
厚生労働省が発表している「令和5年簡易生命表」によると2023年における日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性は87.14歳だった。一方、内閣府が公表している「令和5年版高齢者白書」によると2019年時点の健康寿命は男性が72.68歳、女性は75.38歳となっている。
これを踏まえると病気やケガによる入院や体力の衰えなどでペットの世話ができなくなる時期は、思ったよりも早く訪れるかもしれない。突然の病気やケガであれば、平均寿命や健康寿命に到達するよりもはるか前にペットの面倒が見られなくなってしまう可能性もある。
こうした現実をしっかりと理解し、ペットの飼育に対して「最後まで責任を持つ」ということを胸に刻み、今のうちからお金の準備も含めて備えを始めてほしい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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