最近ニュースなどで話題の「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」をご存じですか?「聞いたことはあるけど、早期退職と何が違うの?」と疑問に思っている方もいるでしょう。

生き方が多様化する現代では、働き方や生活スタイルも多様化してきています。この記事では、FIREを実現するためにどのように目標を立て、どのように行動していけば良いのかを解説します。

FIREとは?

「FIRE」とは?早期退職と何が違う?
(画像=PIXTA)

まず「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」とは何なのでしょうか。Gakken ジュニア・アンカー英和辞典で、一つ一つの意味を確認してみます。

  • Financial 「財政上の」「金融の」
  • Independence 「独立」「自立」
  • Retire 「退職する」「引退する」 
  • Early 「早い」「早く」「初期の」「初期に」

つまり、「経済的な自立を実現させて、仕事を早期に退職する生活スタイル」のことです。生活スタイルが多様化しているなかで、趣味やボランティア活動等の仕事以外を中心にしたスタイルがあっても良いですし、仕事をするにしても時間や場所は自分で決めるスタイルがあっても良いのです。

FIREは、今までの一般的な働き方を大きく変える生活スタイルの一つで、欧米を中心に世界各国で実現を目指している人が出てきているようです。

筆者はファイナンシャル・プランナーですが、この生活スタイルには大賛成です。働くことは生きていくためのお金を得る手段として必要であり、素晴らしいことです。しかし、働くことへの考え方や環境の違いは大きく、人によっては働くことがストレスになっています。

働くことは生きがいと感じる人もいるでしょうが、やりたい事や楽しい事だけではないので、早期リタイアをできるものならしたいと考える人もいるでしょう。

また、若いうちに成し遂げたい大きな夢がある人は、FIREによって早期リタイアすることで実現できるかもしれません。

FIREと早期退職の違い

FIREも早期退職も、定年を待たずに早期に退職することは同じですが、リタイアを迎えるまでの資産の作り方や老後資金の考え方が異なります。

早期退職は、会社都合の場合だと割増された退職金を受け取れることもありますが、基本的に退職後は受け取った退職金と将来受け取る公的年金や貯金などを元手に、少しずつ切り崩しながら生活していきます。

それに対し、FIREは経済的自立のために意欲的な貯蓄をし、退職後は運用益などで生活し元手(元本)は減らさないようにすることで、何歳まで生きても問題がないように備えるのです。

FIREが可能な目安は年間支出の25倍の資金

FIREの指標の一つに、目安として「毎年の生活費の25倍貯める」があります。次の4%ルールとセットになりますが、例えば年間の生活費が240万円(月々20万円)だったとしましょう。25倍は6,000万円なので、貯蓄額が6,000万円になったら、早期リタイアが可能と考えます。

ここでポイントになるのは、毎年の生活費の額です。生活費が400万円なら1億円になり、100万円なら2,500万円になります。つまり、貯める目標額は自分自身で決められるのです。

FIREの4%ルールとは?

FIREのもう一つの指標に「4%ルール」もあります。生活費の25倍貯めた資金を4%で運用すれば、運用益だけで生活費が賄えることを意味しています。先ほどの例で言えば、6,000万円を4%で運用すると年間で運用益は240万円(税は考慮しない)になり、生活費240万円を全て賄えます。FIREでは運用利回りの4%はあくまで目安であり、実現可能なら5%や10%でも構いません。

ただ、昨今の世界的な低金利を考えると、4%を目標にするのはかなり厳しいかもしれません。たまたま保有していた株の株価が大幅に上昇したり、急な円安で保有していた外貨建て商品の円ベースでの評価が大幅に上昇したりすることはあるかもしれませんが、4%の運用益を毎年安定的に実現していくのは決して簡単なことではありません。

FIREを実現するためにすべき2つのこと

FIREを実現するには、生活費から経済的に自立できる目標額を決めて、資金作りを開始するだけです。

手取り収入から生活費を引いた額をFIREのための貯蓄にまわせばいいので、例えば収入が年480万円、生活費が年240万円だとしたら、FIREのために毎年240万円貯めることができます。目標額が6,000万円だとしたら、0円から貯め始めると25年(6,000万円÷240万円)でFIREの実現が可能になるという計算になります。

目標額達成時期を早めるには、生活費を下げる、勤労収入を増やして貯蓄額を増やす、運用で資産を増やすなどが考えられます。

●(1)FIRE後に必要な生活費を把握する

1ヵ月や1年などの一定期間、FIREを想定した生活をして家計簿を付けてみると、実現後の必要な生活費を把握できます。自分一人の場合、実家に住んだり実家の自動車を利用できたりすると、生活費はかなり抑えられます。

ただ、家族がいる場合は減らせない支出もあるため、家族の理解と協力が必要不可欠です。例えば教育費は、私立中学・高校、大学などに通学する場合、毎年100万円程度の支出になり、返済不要の奨学金を受け取れない限り、負担は避けられません。FIREのために子どもが進学を断念するのは本末転倒です。

●(2)FIREに成功した人が何を実践したのかを知る

日本国内で既にFIREを実践している人は、少ないながらも実在します。

例えば、30歳で約7,000万円貯めてセミリタイアを達成したAさんや、50歳で1億8,000万円貯めて早期リタイアしたBさんです。Aさんは米国や日本の株式に投資し、Bさんはアパート経営で収益を上げています。FIREを実現するには、自分に合った投資手法を確立していくことが近道だと言えます。

FIREは新しいライフスタイルの選択肢の一つ

現代は多様化の時代であり、希望する生活スタイルも十人十色です。早期リタイアを希望する人もいれば、一生涯働きたい人もいるでしょう。節約が得意な人もいれば苦手な人もいます。また、居住地や家族構成によって家計構造も変わってきます。

ライフプランの正解は一つではないので、FIREのような生活スタイルも今後広がっていくのかもしれません。

執筆者:松浦 健二(ファイナンシャル・プランナー)

(提供=auじぶん銀行)

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