日本政府は欧州におけるEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)を加速させる姿勢を明確にしました。自由貿易協定(FTA)が関税撤廃、規制緩和などの通商障壁の除去に留まるのに対し、EPAは適用範囲が広く投資のルール化や知的財産保護等も対象範囲とした包括的な経済協定となっています。
現在、日本ではシンガポール、インドネシア、スイス等をはじめとした13カ国の間でEPAが締結・発効されています。現在もEPAを交渉している国は複数あり、既に記載のEU(欧州連合)、オーストラリア、モンゴル、カナダ、コロンビア、韓国と名を連ねています。さらにニュース等でよく耳にするかもしれませんがRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)等もEPAに分類されます。
協定締結国が高い関税をかけて守っている産業・農業分野の特定品目についてEPA交渉時に難航を極める時があります。有名なケースとしてはTPP協定の際にアメリカが日本のコメ、牛肉市場に目をつけて関税撤廃を要求すれば、日本は得意分野である自動車、電気機器の市場における関税の撤廃を要求すると言う構図となっております。双方共に自分の得意分野について相手に関税を撤廃してもらいたいが、自国の聖域分野は死守したいのです。聖域は安全基準や品質基準の違いを理由に対象外としたい様ですが先の見えないにらみ合いとなっています。
そもそもEPAの狙いは聖域なき全品目の関税撤廃を最終目標に掲げていますので、これまで国に守られてきた産業は段階的に開放されていくと考えられます。その大きな流れを鑑みると、世界的にも信頼性の高い日本の自動車産業は大きな恩恵を受けると考えられます。
特にハイブリッドカーは日本が世界に誇る最先端技術の集大成です。電気自自動車を真似して作る事は出来てもハイブリッドカーで使用されている技術はそう簡単に真似る事は出来ないでしょう。その最先端の省エネ技術を掌に載せているトヨタ(7203)、ホンダ(7267)はさらに伸び代があると考えてよいと思います。さらにハイブリッドカーに欠かせない電池部分を手掛けるジーエス・ユアサ(6674)も有望銘柄と考えられます。
【関連銘柄】
マツダ(7267)
・・・欧州比率が高く、ドイツで人気がある
ヤマハ(7272)
・・・アシスト自転車等の市場拡大が期待できる
ニコン(7731)
・・・欧州比率が高く売上高が増加している
スズキ(7269)
・・・欧州での小型車に力を入れている
EPA発効により関税撤廃された品目は逆に欧州特産品である高品質なワイン、チーズ等と熾烈な競争を強いられる事になります。この影響を受けるのは飲料メーカーや食料品メーカーだけでなく日本の農家全体が深刻な事態に陥るかもしれません。さらに欧州連合としては日本の公共インフラ産業が閉鎖的であると指摘していますので、鉄道等の大型公共交通機関等も同様の様相を呈す可能性があります。
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