メタンハイドレート,株
(写真=PIXTA)

経済産業省がメタンハイドレートを商業化した場合の売上見込が3兆3000億円程度に達すると試算した。これは技術開発などで政府が投じた予算総額の30倍を超える金額だ。まだコスト面など不透明な要素が多く残されてはいるものの、輸入の化石燃料に依存している日本の現状から、期待感が高まっている。

「燃える氷」メタンハイドレートのメリットとは

メタンハイドレートは、メタンと水が深海の海底下などの「低温高圧下」でシャーベット状に結びついた物質で、「燃える氷」とも呼ばれている。その存在は以前から知られていたものの、天然ガスや原油と比べると採掘コストが高いことから、開発はあまり進んでいなかった。

メタンハイドレート由来のメタンガスには、環境にとって2つのメリットがある。1つ目は燃焼した際に出るCO2が石炭や石油の約半分であること、2つ目はエネルギー量がシェールガスの2倍以上得られることだ。これまで実用化はだいぶ先のことと考えられてきたが、日本の技術力が夢を現実のものにしようとしている。

メタンハイドレート普及に関連する銘柄は

日本唯一の海洋掘削コントラクター 日本海洋掘削

日本海洋掘削 <1606> は所有する巨大な地中掘削設備によって、原油やガス田などの掘削を請け負っている。2016年2月に、受注金額約13億円が見込まれる事前掘削作業に関する契約を交わした。決算上に反映されるのは2017年3月期になるが、その先の本格掘削にも参画する可能性もある。

日本初「シェールオイル」採取成功 石油資源開発

石油資源開発 <1662> は石油・天然ガスなどのエネルギー資源について、探査・開発・販売を行っている。
メタンハイドレートに関しては、2012年2月から1年半かけて経済産業省が事業主体となって実施された、海洋産出試験に参画するなど、積極的に取り組んでいる。

浮体式貯蔵設備で世界2位 三井海洋開発

三井海洋開発 <6269> は直接メタンハイドレートの開発には関係していないが、将来的に商業化が実現した場合には、同社の技術が生産プラントを載せた洋上プラットフォームに活かされることが十分考えられる。

地質調査の最大手 応用地質

応用地質 <9755> は建設コンサルとしても知られ、2001年7月に発表された「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」を実現するための官民学共同の「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」にも参画しており、計画の「フェーズ2」も参画している。

「ガスを固体に変える技術」を持つ 三井造船

三井造船 <7003> は傘下に三井海洋開発を持ち、メタンハイドレートの調査掘削で活躍しているドリルシップ「ちきゅう」の建造でも中心的な役割を果たしてきた。商業化には、メタンハイドレートを海上に上げてくる全体システムの設計が不可欠だが、そこに同社が開発実績を持つ「ガスを固体に変える技術」が核として輸送などに利用できるのではないかとの期待を集めている。

資源を見つける無人潜水機技術 川崎地質

川崎地質 <4673> は地質調査の専業大手で、無人潜水機を駆使して高分解能の海底調査を行うなど、海洋部門に強みを持っている。メタンハイドレートなどの海底資源探査には、無人潜水機が必要不可欠となるため、同社の技術を使って測定データの処理・解析を通じて海底資源開発に大きく貢献している。

将来の商業化にあたって、安全な掘削・安定的な輸送などのために想定以上のコストが発生した場合には、試算された3.3兆円の規模にならない可能性はある。だが「シェールオイル」の米国の活躍ぶりを、指をくわえて見ている他なかった政府が、今度こそ「日本再興の切り札」にと力を入れていることからも、目が離せない分野と言えるだろう。(ZUU online編集部)