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(画像=ニトリWebサイトより)

春の引っ越し、模様替えで利用した人も多いかもしれない「ニトリ」 <9843> 。同社は29期連続で営業利益を黒字にしている。なぜここまで強いのか分析してみよう。

ニトリが強い理由は経営戦略とライバルの不在

同社の戦略は「SPA」、つまり「製品の製造・販売を連結して行う」というものだ。

通常の小売業であれば、品を製造している問屋系企業から商品を仕入れて販売し、その売り上げから経費(社員の給料や運搬コスト)を差し引く。これが通常の小売業の「営業利益」だ。

ところがニトリの場合は問屋から仕入れるのではなく、商品の「製造」も自社で行っている。これが「SPA」という戦略である。メリットは、本来は問屋に支払うはずの仕入れコストを商品の販売価格に転換できることだ。そのため結果として商品の高収益率を実現することができるのである。

家具・インテリア業界の経常利益(営業利益から銀行への利息支払いなどの営業外経費を引いた数値)を算出してみたところ、2016年4月時点での平均的な経常利益率は約6%前後。これに対してニトリはなんと約16%。このゆとりある経常利益率を常に確保していることが、29期連続で黒字を出せたもっとも大きな理由であると考えられる。

ニトリ好調を読み解くもう一つの要素が「ライバルの不在」だ。

2016年現在、家具・インテリアにおける「SPA」戦略を導入し、収益をあげられている企業はニトリのみ。このため徹底したコスト管理と高収益転換を行い、その上でもほかの家具・インテリアメーカーよりも比較的安価に商品を提供するというビジネス戦略により、ほかの低価格競争をしている企業はニトリに追従できていない。

また29期連続で経常利益を黒字で算出しているということで企業の財務的な面でも余力があるため、まさにライバル不在の独走状態である。

経済状況に振り回されない「為替予約」

これはニトリに限った話ではないが、日本の商品製造業はたいてい、人件費が安い海外に工場を持っている。近年は陰りが見えてきた中国や、ベトナムなどで生産をおこなっている。

そういった形で海外生産を行う際には切っても切り離せないリスク「経済状況の変化による「為替相場の変動」である。

日経などの報道によれば、2016年現在のニトリに円安が及ぼす影響というのは「円安1円につき約16億円の損失」となっている。

その対策として用意されている方法が「為替予約」だ。これは銀行などの金融機関と「1ドル○○円での為替売買を予約します」という契約で、これを行う事により為替の影響を限定し、相場変動による業績のブレを減らすことができるという仕組みだ。

良いことばかりではなく、為替予約にはコストが掛かる上に、たとえば二トリにとっては営業利益が増える「円高」の方向に為替が動いたとしても、その恩恵を受けることはできないという形に固定されてしまう。

通常の企業というのは全てを為替予約するのではなく、ある程度「相場変動に影響する部分」を残し、「あわよくば良い方向に動いて儲かれば……」という、ある種よこしまな気持ちを生むのだが、結果として近年のような大幅な為替変動がある経済状況では、損失を広げるという形になってしまっている。

ニトリは「運の要素」によって収益をあげる誘惑を断ち切り、本業によって顧客のニーズを満たして収益を安定してあげるため、他の企業よりも厳しめに為替予約を行っている。

こういった姿勢と行動が円安による損失を防ぎ、また良い商品を作り続けて業績を上げる原動力の根幹になっていると考えられる。

他社にない経営戦略・高い利益率を維持してなお、低価格でよいものを提供できるという運営。そして運の要素を排除し「本業でキッチリ利益を出す」という覚悟。

これらを兼ね備えた企業が、ニトリ以外にも一社でも多く日本に生まれれば、日本経済も強くはなるのではないだろうか。

土居 亮規
(バタフライファイナンシャルパートナーズ AFP)