海外不動産投資
(写真=PIXTA)

最近は、国内不動産の将来の見通しについて悲観的になり、海外不動産に目を向ける人も増えています。ですが、海外不動産が投資対象として最良の選択なのでしょうか。考えておかねばならないリスクもあります。今回は、海外不動産投資の現状とリスクについてご説明します。

不動産投資のルールが日本と異なる

外国人による不動産投資のルールは国によって異なります。アメリカでは、個人でも法人でも不動産投資は自由ですが、さまざまな制限が設けられた国も少なくないのです。例えば、中国には土地の私有制度がありません。中国人も外国人も「使用権」を購入します。外国人の場合は、「中国国内で働いている個人は自己居住用の不動産を購入できる」とされ、投資目的の外国法人の場合は「外商投資企業」の設立が必要です。

またASEAN(東南アジア諸国連合)諸国を見てみると、インドネシアは個人での不動産購入ができない一方で、フィリピンは個人も法人も不動産を売買できます。タイは外国人の土地の所有を認めず、コンドミニアム(日本でいう分譲マンション)だけは、海外在住の外国人でも簡単な手続きで購入が可能です。ただし、その場合は1棟のコンドミニアムに対して外国人の購入面積割合が49%以下と定められています。

ルールの変更が行われる可能性も

いくつか国ごとに不動産投資のルールをご紹介しましたが、そのルールがしばしば変更されることはご存じでしょうか? 海外不動産投資では、どのような狙いで、どの国の不動産を購入するかがポイントになります。

上述の中国では8年間にわたって「1年以上居住している外国人が実需に応じ一軒のみ購入できる」としていたものを、2015年8月に「居住外国人が実需に応じて自己居住用不動産を買える」に変更しました。

マレーシアでは、既に不動産投資が過熱しています。2012年には、一部地域で不動産購入の最低価格50万リンギット(1,400万円)を一気に100万リンギット(2,800万円)に変更しました。

ASEAN加盟10か国は2015年12月、広域経済連携の「ASEAN経済共同体(AEC)」を発足させました。不動産投資についてもルールを共通化していく可能性がありますが、新たなルールがどのような内容になるかは不透明です。

「制限」から「緩和」へのルール変更の場合は、競争が激しくなるだけでむしろチャンスだと理解することも可能です。逆に南米などは、政権が社会主義政権に変わって不動産投資を制限したケースがあります。ルール変更に対処するには、現地事情に詳しい情報ルートを築く必要があります。

詳細に現地を見ることができない

不動産投資の収益は、家賃収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)の2つで、これは国内不動産でも海外不動産でも同じです。しかし、どのレベルの家賃が設定できるか、現地のことをよく知らないと正確に判断はできないでしょう。

近年、フィリピンやタイでは「プレビルド」と呼ばれる建設前不動産物件がよく売買されます。日本でいう「青田買い」です。タイでは建設計画ができ、当局から建築許可が下りた段階で販売が始まります。

プレビルド物件の場合、販売開始の価格と成約率が80%に達したユニット販売価格では、1.2倍~1.5倍近く価格が値上りするケースも多くあるのですが、着手金を払ってもいつまで経っても建物が完成せず、トラブルに発展している例もあります。建設業者に問題があるわけですがどうすればこのような情報を得られるでしょうか?

英語が堪能であっても現地の情報に接する機会が乏しい場合、ましてや、日本語以外の言葉が弱い人にとっては、投資判断が非常に難しくなります。

為替や、銀行手数料のことも考える必要がある

海外不動産の売買はドルを使うケースが多いです。資金不足の場合は銀行でローンを組むことになりますが、そのルールも国によって違います。日本国内と同様、不動産投資の借入は他の融資よりはしやすいですが、外国人には貸さなかったり、簡単に用意できない証明書を求められたりします。他国間のお金の移動は思いの外複雑です。自分で持ち込むにも制限額が決まっていたり、持ち出しを取り締まる国もあります。

加えて、送金に金融機関の手数料(スプレッド)が掛かります。日本に居ながら外貨建てで海外の不動産投資をする場合、投資した国に移住するなら通貨リスクは限定的ですが、投資後に円高になった場合は、その分利益を減らし、損失になることもありますので注意が必要です。。

まとめ

海外不動産投資は、国内より有利な利回りになる不動産も多いのですが、国ごとに不動産投資のルールが違ったり、しばしば変更されたりします。現地事情に詳しいルートを築けないと難しいでしょう。為替や銀行手数料のことも考えておかねばなりません。後で後悔しないように、売買においても法人並みの情報収集力が求められます。海外不動産への投資は、特に慎重を期して取り組むことをお勧めします。(提供: 不動産投資ジャーナル

【関連記事】
平成28年度税制改正で規制が入る「不動産投資に関する消費税還付」とは?
日銀のマイナス金利が不動産投資に与える影響とは?
不動産投資の成否のカギは対象エリアでの賃料相場の把握
規制緩和でAirbnbでの空室運用が実現!?高稼働率の実現も夢ではない
ROIを自分で計算できるようになりましょう! 不動産投資の重要指標