投資銀行
(写真=Thinkstock/Getty Images)

世界でもトップクラスの投資銀行である米ゴールドマン・サックス(GS)の行き先に暗雲が垂れ込めている。米金融大手は軒並み大幅な減益となっており、米金融には逆風だったこともあり業績も落ち込んだ格好だ。2016年第1四半期決算(1〜3月期)の最終利益はリーマンショック後の2009年以来で最低となり、減益率は米大手投資銀行の中でも最大だった。

名門投資銀行のGSにいったい、何が起こっているのだろうか?米FRBが利上げに向けた構えを続ける中、GSが業績を大きく落とした理由は何なのか、第1四半期決算と背景を分析する。

GSの株価はアナリスト予想超だが、厳しい決算

ゴールドマン・サックス(ティッカー:GS)は4月19日の寄り前に2016年第1四半期決算を発表した。トップラインの売り上げは63.4億ドルで前年同期比40.3%減、最終利益は11.4億ドルで一株当たりの利益(EPS)は2.68ドルと前年同期比59.9%減の大幅減収減益決算だった。

大幅な減収減益となり、売上高が事前のアナリストのコンセンサス予想である65.2億ドルを下回ったものの、EPSはコンセンサスの2.50ドルを上回ったため、19日のNYSEでの株価は前日比2.3%高と買われた。同じ週に発表されたJPモルガンチェースやバンク・オブ・アメリカ、シティバンクなどの他の大手行の決算も減収減益ながらアナリスト予想を上回ったことで買われており同じような動きを示した。

通常の投資銀行の収益は、第1四半期決算のウェイトが最も高いのだが、今年は年初から中国の減速懸念と原油の急落で金融市場は調整色を強め、商いは縮小。市場の低迷を受け、GSの第1四半期決算はリーマンショック後の2009年の水準まで低下した。同社は通期のガイダンス等を公表していないが、比重の高い第1四半期がこれだけ低迷していると通期で前年並みの業績を回復するのは厳しそうだ。

部門別でも、大半の部門で逆風が吹いている。投資銀行部門の売上高は前年比23%減の14.6億ドル。そのうちM&Aアドバイザリー・フィーは20%減の7.71億ドル、引受フィーは27%減の6.92億ドルとなり、いずれも20%を上回って悪化した格好だ。

証券ビジネスでも、法人顧客部門の売上は34.4億ドルと37%減、債券・為替・コモディティ(FICC)部門の売上は16.6億ドルと47%減、株式トレーディング部門は17.8億ドルの23%減となっている。

第1四半期の株主資本利益率(ROE)は6.4%と、前年同期の14.7%から急低下した。少なくとも10%の水準が欲しいところだ。

GSの突出した、金融業界内の減益率

GSの第1四半期の業績を他社と比較してみよう。JPモルガンチェースの最終利益は52億ドル、EPSは1.35ドルで7%減益。バンク・オブ・アメリカの最終利益は27億ドル、EPSは0.21ドルで13%減益。シティグループの最終利益は35億ドル、EPSは1.10ドルで27%減益。ウェルス・ファーゴは最終利益は55億ドル、EPSは0.99ドルで5%減益。

各社とも減収減益であるが、GSの2015年1-3月期は、利益水準、減益率とも業界大手の中で最悪のパフォーマンスとなっている。

営業費用は29%減の47.6億ドルと減っており、ボーナスなどを含めた人件費の総額(コンペンセーション)は40%減少しているが、売り上げも減少しているため、売上げとコンペンセーションの比率は42%と変わっていない。

ゴールドマン・サックスのリストラ策

ゴールドマン・サックスはすでに経費削減などのリストラ策を打ち出している。交通費、接待費等を削減するだけでなく、サポートスタッフの人員削減など、人件費の削減にも着手している。第1四半期の従業員数も微減のようだ。

過去4年でトータルのスタッフ数は11%増ながら、アナリスト、アソシエイツ、VPといった若い社員の比率が17%も増え、人件費の高いパートナーに比率が2%減った。その結果、人件費はで2.7億ドル減少しているという。業界でもトップクラスのプロフェッショナル集団と見られているゴールドマンの若年化が進んでいるようだ。

そして、競合他社が撤退もしくはリソースを減らしつつある対法人顧客の株式、債券のトレーディング部門を強化しはじめているようだ。グローバルなフランチャイジーを活用したクロスセリングの強化により、収益機会の増大を目指している。これは収益至上主義で自己部門での利益を積み上げていたと言われる昔日のゴールドマンの企業文化からは想像し難い方針転換にも見える。

ウォール街の名門復活はあるのだろうか?名門中の名門、ゴールドマン・サックスの課題は大きい。

平田和生
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)