みずほ,第一生命,経営統合
(画像=Webサイトより)

みずほフィナンシャルグループ傘下の3企業と第一生命保険が3月30日、2016年上期を目処に統合すると発表した。

運用額は約50兆円にものぼり、日本国内では最大級となる見込みだ。

今回はなぜこのタイミングで統合を行ったのかと、それぞれの企業の運用方針や投資哲学から合併後の予想を行いたい。

統合を決意した決め手は「マイナス金利」

国内で新しく導入された「マイナス金利」の影響で銀行や保険会社の収益が圧迫されている。こういった話を近日、目にすることは多い。

銀行としては当座預金のにマイナス金利が導入された影響で経営コストを圧迫されており、保険会社としては国債金利の逆鞘により想定していた運用リターンを確保できなくなり、貯蓄型保険の見合わせなど影響が出ている。

こういった追い詰められた両業界が危機感を覚え、その結果として実現したのが今回の統合案だ。

もちろん今回のマイナス金利導入がすべての決め手となったわけではなく以前から水面下ではさまざまな交渉が続いていたのであろうが、マイナス金利下でも収益性を確保する必要性があるため交渉が合意に近づいたというのは想像に難くない。

各社の運用方針と投資哲学

では次に今回統合される予定の各社をまずは分析したい。

みずほフィナンシャルグループ傘下からは「みずほ信託銀行」の運用部門、「みずほ投信投資顧問」、「新光投信」の3社、第一生命側からは「DIAMアセットマネジメント」をそれぞれ出し合い、統合する計画だ。

もっとも第一生命側の「DIAMアセットマネジメント」についてはみずほグループと第一生命が同額を共同出資して立ち上げた企業のため、実質はほぼ「みずほグループ内での運用部門の統括」という形になる。

まず「みずほ信託銀行」であるが、基本的なスタンスは「中期的な視点での総合収益の追求」だ(みずほグループ公式サイト、運用部門ページ)。

ターム(期間)を数年単位でとることで安定した運用を行い、さまざまな商品に投資を行ったうえで合算して収益を出すという考えだ。

次に「みずほ投信投資顧問」。こちらもみずほ信託銀行の運用部門と同じくターゲットとするタームは中期であるが、違いは徹底した情報分析により「アクティブ運用」を行い、市場平均を上回る超過利益を追求するという点が異なっている。

3社目の「新光投信」についても「みずほ投信投資顧問」と同様、ターゲットは中期で徹底した分析により超過利益を追求する姿勢となっている。

そして第一生命とみずほグループの共同出資会社「DIAMアセットマネジメント」であるが、こちらはリスクコントロールと金融工学を駆使した上で投資を行い、マーケットや個別銘柄の「理論価格と市場価格のゆがみ」から収益をあげることが投資哲学となっている。

それぞれの運用方針を踏まえた上での統合予想

これら4社の運用方針からみえるのは、それぞれ各社アプローチは違えど「分析を徹底して行い、中期的に市場平均を上回る収益を上げる」という姿勢だ。

いままではそれぞれの運用手法の違いを差別化要素とし分社化をしていたわけであるが、今回の統合とそれによって起こる「運用資金の一極集中」の動きから考えるに「収益を上げるために、なりふり構っていられない」という本音が見えてくる。

マイナス金利によって収益性は悪化している反面、幸か不幸かこれまでの業績が順調に推移している関係上、いままでの販売・企画した金融商品の配当のためにこれまで通りの収益を上げる必要がある。

また先のことを考えると新たな商品を開発する際に、より一層細かい分析やリスクコントロールを求められることも一因であろう。そういった情勢の変化を踏まえ、今まで差別化のポイントとしていた分社構造を捨ててでも「どんな手法を使ってでも収益をあげ、運用部門の業績を悪化させない!」という決意の表れが今回の統合であると筆者は読み解く。

おそらく今回の統合は株主や運用商品の保有者の方にとっては、プラスと働く要因が大きいであろうと思われる。
理由としては、統合によって起こる「運用手法の多様化」と「(マイナス金利導入における)危機管理の早さ」だ。

「運用手法の多様化」については先に述べた投資哲学と運用方針をそれぞれ統合することにより、今まで実践した各社の運用方法が一極化され、互いに収益機会を増やすこととなる。また資金が一元化され、国内最大の運用額を扱っているというスケールメリットを生かせる機会が生まれるであろうこともポイントだ。

もっとも評価できる点としては「危機管理の早さ」だ。
銀行や保険会社各社が運用収益の確保に苦慮し、マイナス金利の損失分を実質的に「顧客に転換する」という形で帳尻を合わせようとしている企業も見られる中で、こういった統合による対策をいち早く行うということは「顧客に損を押し付けるのではなく、自社の運用努力によってこれまで通りの運用を行う」という姿勢に他ならない。

もちろん統合した結果が上手くいくと決まったわけではないが、少なくとも現状維持を行ったまま損失を顧客に転換するよりははるかに健全で、前向きなスタンスであるということはいうまでもない。

重ねて言うが現状、統合したからといって運用が上手くいくという単純なものではない。

しかし、現状に対する対策をいち早く行い、より一層の収益機会を探すというスタンスを打ち出している以上、既存の顧客の方々は期待をして今後も付き合いをしていけばいいのではないだろうか。


土居 亮規

バタフライファイナンシャルパートナーズ(AFP)