ビットコイン,資金決済法法規制
(写真=PIXTA)

3月4日、資金決済に関する法律(資金決済法)などを改正して「仮想通貨」に関する規制を行うことなどを内容とする法律案(「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」)が閣議決定され、今国会(第190回国会)に提出された。

法改正に至った経緯

昨年2月、最も有名な仮想通貨であるビットコインの交換所を日本で運営していたMt.Gox(マウントゴックス)が、東京地裁に民事再生手続開始の申立てをした。同年4月には東京地裁が民事再生手続開始の申立てを棄却し、破産手続開始を決定した。破産手続開始時点の資産は約39億円、負債は約87億円で、約48億円の債務超過であることが判明した。

同社代表者は、ビットコイン売買のため顧客が預けた資金の着服など業務上横領などの容疑で逮捕された。この事件では顧客の資金やビットコインが返還されないなど、「仮想通貨」の利用者が損害を被ることとなった。

この事件を通じて明らかになったことは、日本では、ビットコインなど「仮想通貨」の法的位置付けや、どの法律により規制するのかが不明であるということである。

そこで昨年の夏以降、金融庁が設置した金融審議会「決済等の高度化に関するワーキング・グループ」において、「仮想通貨」に関する国内法制度整備の検討が進められ、上述の通り、今年3月に改正資金決済法案の国会提出へ至った。

改正法案における「仮想通貨」の定義

改正資金決済法案では、「仮想通貨」の定義規定が設けられている。改正資金決済法案第2条第5項第1号によれば、次のものは「仮想通貨」となる。

物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

ポイントは、
(1)「財産的価値」であるという点
(2)「不特定の者」を相手方として「対価の弁済のために使用」することができる点
(3)「不特定の者」を相手方として「購入・売却を行うこと」ができるという点
(4)「不特定の者」を相手方として「移転すること」ができるという点
である。

例えばSuica、Edy、nanako、WAONなどのいわゆる電子マネーは、(3)「不特定の者」を相手方として「購入・売却を行うこと」ができないし、(4)「不特定の者」を相手方として「移転すること」もできないことから、「仮想通貨」の定義には該当しないこととなろう。また、使用範囲をどこまで限定すれば、(2)「不特定の者」を相手方として「対価の弁済のために使用」することができないということになるかが問題となろう。

なお改正資金決済法案第2条第5項第2号では、「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」も「仮想通貨」の定義に該当するものと規定されている。

交換業者は「仮想通貨交換業者」として分別管理義務などの法規制を受けることになる

また改正資金決済法案では、「仮想通貨」の売買または他の「仮想通貨」との交換をしたり、それらの媒介、取次ぎまたは代理をしたり、利用者の金銭または仮想通貨の管理をしたりすることを、「仮想通貨交換業」と定義している(第2条第7号)。

また「仮想通貨交換業」を行う業者(仮想通貨交換業者)に登録制を導入し(第2条第8号・第63条の2)、「仮想通貨交換業者」に対し次のような規制をかけることとしている。

第1に「仮想通貨交換業者」は、マネーロンダリングやテロ資金供与への対策が求められることになる。(1)口座開設時における本人確認、(2)本人確認記録、取引記録の作成・保存、(3)疑わしい取引の当局への届出、(4)社内体制の整備などが求められる。

第2に、利用者の信頼を確保するため、「仮想通貨交換業者」に対しては、(1)最低資本金・純資産のルールが設けられ、(2)システムの安全管理、(3)利用者に対する情報提供、(4)利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理、(5)分別管理および財務諸表の外部監査などが求められることになる。また、(6)当局による報告徴求・検査・業務改善命令の対象となり、自主規制も求められる。

さらに資金決済法に規定されている罰則規定(第107条~第109条、第112条~第117条)が、「仮想通貨交換業者」に対しても適用される。

「良貨が悪貨を駆逐する」ことを期待

今回の法改正は、「仮想通貨」の発展を邪魔することを目的とするものではない。悪質な「仮想通貨」や「仮想通貨交換業者」を排除することにより、「仮想通貨」や「仮想通貨交換業者」の健全な発展を促すことを目的とするものである。狙い通り、“良貨が悪貨を駆逐する”ことを期待したい。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有/ FinTech online