我々が生きていく上で、欠かすことのできないのが「お金」。特にサラリーマンの給料だけで収入増を望めなくなった昨今は、「投資でお金を増やしたい」と考える人が多くなってきた。だが投資に興味はあっても、実行に移せない人は大勢いる。

初心者が投資に踏み切れない心理として、

(1)漠然とした恐怖
(2)専門知識がなく、難しそうに感じる
(3)専門家に聞くと、買わされそうで聞けない

が考えられるだろう。要は「動けない」のである。

投資に対する恐怖心をとり除くには

そもそも、人が投資に対して最初に抱く感情とは「恐怖」である。それは「知らない」ことに対する恐怖、そして「お金を失うかもしれない」恐怖である。それが投資に踏み出せない理由(1)の感情につながっている。

先にお伝えしておくと、残念ながら投資において失敗を100%回避することはできない。「損をしたい」などと思っている投資家は一人もいないが、未経験者が「絶対に失敗しないようにする方法を見つけよう」と考えていては、いつまでたっても一歩を踏み出すことはできない。投資とはあくまでも確率論であって、100%安全などありえないからである。

だから投資をする際には、1回ごとの損得に目を向けるのでなく、もっと全体からものごとを捉える視野、つまりトータルでプラスになるような考え方を持つことだ。

投資が怖いと思っている人が銀行の普通預金口座にお金を預けていることも立派な投資なのだから。残念ながらその利息はゼロに限りなく近く、日本円で買える価値が減っているのが現実であるが…。

投資に必須なのは「客観的な分析」

思い切って投資を始めたとしよう。ここでありがちなのが、最初に儲かってしまうと、喜んだ勢いでお金を大量につぎ込んでしまうことである。これが、投資で失敗する典型的なパターンである。

ギャンブルのカジノでもそうだが、最初にチップを置くことは誰もが慎重である。ところが、まぐれや時の運でその勝負に勝つと、その次からチップの量は増えて行く。そして、それを失うまで勝負は続く。それが人間の基本的な心理なのだ。

まぐれはそう長くは続かないものだ。投資で成功するためには、投資に踏み出せない理由(2)「難しそう」を克服しなければならない。

投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、投資を行う際の基準の一つは「事業の内容を理解できること」だといっている。それを証拠に、バフェット氏は自らの友人でもあるビル・ゲイツ氏が有するMicrosoftにも「IT業界はよく分からない」という理由で一切の投資をしていない。

投資したい案件について調べるのは当然のことである。自分で納得することなく、ただ他人のいう「うまい話に乗る」ことだけ考えていると、いずれは失敗するのが目に見えている。その案件情報が謳っているリターンが真実なのかどうか裏をとり、自分で「これなら」と確信できる案件に投資すべきなのだ。

たとえば「売上の10%を配当で支払います」という投資案件があったとしよう。

良いと感じた案件があったら、「その事業はどういうビジネスモデルなのか?」「利益の源泉はどこにあるのか?」といったことを自分で納得できるまで確認してみることである。

その案件の原価がほとんどかからない事業モデルであれば、10%の配当は十分可能であるし、たとえ売上がいくらであったとしても、経費がかかり過ぎる事業なら、それは無理があると判断できる。

出資を決める際には、お金を失うかもしれない恐怖心や「当たって欲しい」という感情と切り離して、投資案件を冷静に分析することが大切なのである。

投資初心者が犯しやすい間違い

では、投資に踏み出せない理由(3)「専門家に聞いたら買わされそう」について。投資でなくても、たとえば買い物時に販売員が近寄ってきたら「買わされるんじゃないか」という思いがよぎることは、誰しも経験があるだろう。

ここで「買わされる」と不安になるのは、その場のノリや感情にまかせて「買うか」「買わないか」を判断しているからである。

多くの初心者が犯す間違いの一つに「投資案件を、紹介してくれた人の人柄で判断して決める」ということがある。「この人はいい人だから、騙すことはないはず」という理由で投資を決めると、後で必ず後悔することになる。

販売員は、あくまでも販売することが仕事なのだという認識を持ち、「親切にしてくれた」とか「親身に話を聞いてくれた」といったことを、案件を選ぶ際の判断材料にしないことである。

投資で成功するためには

基本的に、投資で成否を握るのは煎じ詰めると「知っているか知らないか」の差だけである。

こういうと「それだけ?」と思う人もいるかもしれないが、大事なのは情報の質である。よい情報を得るには、一次情報をとりにいくのが一番。つまり自分の足を使うことだ。投資情報ならば、説明会やセミナーに参加するのがいいだろう。

ただし、いたずらに情報収集だけに努めていると、余計に混乱してしまうことがある。そのためにも、しっかりとした土台を築いてほしい。

情報は2階層になっている。基礎となる土地にあたる部分は一生使える普遍的な知識、その上に乗る建物にあたる部分は時代の変遷によって変わる具体的な投資案件となる。

そのためには、土台作りとなる勉強とその上物を得るための勉強を分けて考えることをお勧めしたい。投資で勝ち続ける人は、土地と建物の両方に気を払っているのだ。

俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

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