「もしもの時の備えは絶対に必要です。お客様の責任とリスクを考えると、これくらいの保障は必要です。これは『良い』保険だと思いますよ」――。
保険担当の営業マンに、将来の「もしも」「万が一」を指摘され、毎月の保険料がそんなに高くないと言われ、「いい商品」と言われ、「そうかもなぁ」と思って契約。
たしかに将来に対する備えは必要だ。なかなか長期に渡る将来のことについて考える機会はなくとも、就職、結婚、転職といったライフイベントの度に、「保険に入らなくていいの?」と言われるものだし、既に保険に加入していても、「生活スタイルにあっていますか?」と聞かれれば、「心配ありません!」と自信を持って言える人は少ないだろう。
保険選びの際には、多くの保険会社からセールストークを受けて商品を選ぶのが一般的だろうが、ここには大きな「落とし穴」もある。実際に契約した人たちがあとで気づいた、よくある落とし穴と、そこに落ちないための対策を紹介しよう。
1「初日からの入院保障」はホントにお得か? 必要か?
医療保険の多くには「免責期間」が設定されている。たとえば「入院4日目から(入院給付金の)対象」という具合だ。最近はこれに対して、「入院初日からカバーする」という商品が注目されているが、この「初日からの保障」は、本当にお得なのだろうか。
この場合チェックしなければいけないことは、初日からの入院保障が、基本保険料に含まれているのか、それとも「特約」に含まれているのかということだ。
基本保険料に含まれていれば問題ないが、「特約」の場合は要注意だ。「初日からの保障」と「4日目からの保障」で保険料が異なる場合がある。その保険では初日からの保障はお得ではなく、保険料の増額に見合った保障の拡大となるのだ。
2「がん」にかかったのに「がん保険」の給付金が1/10?
「日本人の3人に1人がかかる」ともいわれる病気「がん」。罹患したとき手厚い保障を約束するがん保険は心強い味方だ。ところがこのがん保険、がんの進行度によって保障が大きく変わるということはあまり知られていない。
一口に「がん」といっても種類がいろいろある。「上皮内新生物(初期のがん)」「悪性新生物(通常のがん)」は両方とも一般的に「がん」の一種だが、がん保険の世界でこの扱いは大きく異なる。
がん保険で支払われる給付金には「診断給付金」や「手術給付金」、がん専門の「入院給付金」等があるが、上皮内新生物の際の取扱は商品によって異なる点に気をつけたい。商品によっては、診断給付金が10分の1程度となったり、そもそも保障の対象外となったりすることがあるのだ。
3 「終身保険」の落とし穴
終身保険を勧める専門家は多いが、たとえば「多くの保障が60歳や65歳で終了する」「手厚い保障部分は『特約』によるもの」という場合がある。
これらは正確にいえば、終身保険に様々な特約をつけた形の契約になっていて、特約部分の保障期間が異なっているのである。定期保険特約付き終身保険などは、「終身保険」という名前がつくから、「“すべての保障”が一生涯続くのではないか」と誤解されがちだ。また特約部分は更新タイプになっていて、定期的に保険料が上がっていくことがある点にも注意が必要だ。
保険契約者のなかには、「終身保険はこの商品に入って、定期保険にはこの商品に入る」と複数加入している人も多い。確かに手厚い保障を享受することはできるが、生活に合わない、過剰な保険料支払状況になってしまうこともままあるので気をつけたい。
4 学資保険の「元本割れ」
子どもが生まれると、検討する家庭の多い「学資保険」。加入後に保険料支払者の死亡や高度障害など万が一のことがあると、保障がそのままに以降の支払い義務がなくなる商品もあり、子育ての味方といえるだろう。ただし、学資保険のなかには「元本割れ」をする保険も多い。
つまり、保険料として支払った総額(払込保険料総額)より、返ってくる保険金(将来受け取れるお金)が低くなることがあるのだ。
保険の機能には「保障」と「貯蓄」の両方がある。学資保険は貯蓄性の高い商品だが、医療特約等で保障性を高めることもできる。貯蓄性に期待して加入したつもりが、言われるがまま不要な特約を付けたり、契約途中で解約したりすると元本割れの可能性が出てくる。
特に今は低金利時代。マイナス金利の影響も出てきており、元本割れには要注意だ。
気になったら見直ししては?
「保険の決め手はGNP」と言われてきた。これは、G(義理)、N(人情)、P(プレゼント)のこと。知り合いに勧められたから、プレゼントをもらったから。そんな理由で選ばれていた時代があったし、今でもそういう人は少なくない。
しかし、保険は加入者の生活スタイルに合うか、必要かどうかで選ばれるべきだ。にも関わらずGNPで決めてしまう人が多いのは、「自分に合った保険」「必要な商品」が分からないからにほかならない。
自分でもある程度調べ、学んだほうがよいが、それよりもっと気軽に、お金の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談するといい。「保険の見直しサービス」を利用すれば、特定の保険商品を売るためのセールストークをされることはないだろう。
今回挙げた保険の落とし穴に落ちないために、プロに相談するのは現実的で有効な手段ではないだろうか。