株式新聞
(写真=PIXTA)

米大統領選へ向けた情勢は、共和党指名候補に確定した実業家のドナルド・トランプ氏の支持率が、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を上回る世論調査も増え始めている。「トランプ大統領」誕生がいよいよ現実味を帯びる中、浮上する物色テーマが防衛関連だ。日本からの米軍撤収、核武装容認といったトランプ氏の発言の本気度には疑問符が付く。

ただ、少なくとも本選が迫るまではスタンスを変えない可能性があり、株式市場としても日本の防衛を意識せざるを得ない。

トランプ氏はこれまで一貫して、米国の同盟国の軍事費負担増を強く主張している。日本にも在日米軍の駐留費用の100%負担を求め、従わない場合は撤退も辞さない考えを示すなど、過激な発言がメディアで物議を醸してきた。

日本の防衛費は2016年度の予算案で初めて5兆円を超えた。しかし、仮に完全自主防衛となれば、その額は20兆円以上に膨れ上がるとみられている。アジアでは中国による南シナ海での領有権主張問題が横たわる。トランプ米大統領誕生とともに、日本を含むアジア太平洋地域の軍拡競争が一気に加速する——。

もちろんメーンシナリオとは言い難い。それでも、暴論とも取れる物言いで米国民の人気を集めてきたトランプ氏だけに、チキンレースのようにギリギリまで急進的な態度を示し続けてもおかしくない。大統領選が行われる11月までにはまだ時間があり、その間に株式市場で防衛関連株が盛り上がる公算は小さくないと言えるだろう。

本命・菱重工

大型株では三菱重工業 <7011> に注目したい。陸・海・空すべての分野に強い、言わずと知れた防衛関連株の筆頭。日本の自主防衛に関して、最も貢献するポジションにいる企業だ。

現在の菱重工は、米サンオノフレ原発の蒸気発生器に絡む損害賠償リスクや、日立製作所 <6501> との南アフリカのボイラー建設事業に関する評価損失の問題といった、投資対象としてみる上で無視できない不安要素を複数抱えている。ただ、同社は既に組織運営を事業本部制に一本化しており、同様の大きなリスクが将来的に発生する可能性は小さい。既存のリスクについても、今後は徐々に悪材料出尽くしへ向かうとみられ、安値圏で調整中の株価は魅力的だ。

ドローンのアクモスも関心

小型株では、小銃メーカーの豊和工業 <6203> が有力だ。全米ライフル協会がトランプ氏を支持していることでも思惑視される可能性がある。このほか、三菱電機 <6503> やNEC <6701> 、川崎重工業 <7012> 、IHI <7013> 、石川製作所 <6208> 、東京計器 <7721> 、ミロク <7983> などが代表的な防衛関連株に挙げられる。

一方、ドローン <小型無人飛行機> の存在感は一段と強まるだろう。無人偵察・攻撃への転用を踏まえれば防衛分野とは切っても切れない技術だ。政府の成長戦略関連として既に人気が過熱している銘柄は避け、一押しはドローンを活用した災害防止監視システムを手掛けるアクモス <6888> とする。また、逆にドローンを検知する「ドローンシールド」の理経 <8226> も狙い目だ。(5月25日株式新聞掲載記事)

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