ここ1年ほど、東芝の話といい、三菱自動車、スズキといい、いろんな企業不祥事が報道されています。

「大企業なんだし、ちょっと不祥事が起きたぐらいじゃ危なくならないでしょ」と冷ややかな声も聞こえてきそうですね。でも、本当でしょうか?

今回は、もしも大企業で不祥事が起きた場合、どんなケースであればあなたは危機感を高めるべきか、更にはあなたの勤め先がどうなる可能性があるかを考えていきます。

今年に入って不祥事が急増中

過去10年間の日本経済新聞三紙(日本経済新聞、日経産業新聞、日経MJ)を調べてみると、企業に関する「不祥事」という言葉が1年間に出てくる回数は3紙合わせて平均300回ほどです。

一方、2016年に入ってからは、1月から5月末までにすでに3紙合わせて約250回、企業に関する「不祥事」という言葉が掲載されています。それだけ、今年に入って企業不祥事が増えており、関心が集まっているということですね。

企業の不祥事は他人事じゃない!

では、こうした企業不祥事が起きたとき、私たちは何をすべきでしょうか?

「え? 気にしなきゃいけないのって、不祥事が起きた大企業に勤めている人だけでしょ」なんて思うかもしれません。

確かに日本企業の約9割が未上場の中堅・中小企業です。しかし、こうした企業の多くが、取引先や受注先として大企業との関わりを持っています。

仮に、未上場の中堅企業に勤めていたとしても、メインのお得意先に上場企業が存在し、更にはその企業に不祥事が起きて、業績が悪化したら、あなたの勤め先も影響がゼロとは言えないでしょう。だからこそ、上場企業の不祥事の話であっても、他人事ではないのです。

企業不祥事と株価の深〜い関係

不祥事が起きた会社は、どんな運命を辿るのでしょうか?

上手くいけば復活しV字回復をする企業も出てくるでしょう。一方で、解体されて知らない企業に買収、最悪は倒産…なんてことも。

そうした結末を迎えるまでにも、どんな末路を辿るかの兆候は隠されているはずです。

例えば、株価です! 株価とは、その企業に対して多くの投資家がどう評価しているかのバロメーターです。「この企業は危ないぞ!」「赤字が続くぞ!」と多くの投資家が考えていれば、株価は下落していくのが一般的です。

企業不祥事が起きた場合、その会社の株価がどうなったかを経済学の視点から研究した論文は多数存在します。それらを見ていくと、ある傾向が見えてきます。

株価は急激に下がった後、急激に上がる

直近10年間に不祥事を起こした上場企業の株価パフォーマンスを見てみましょう。

まず、不祥事が発覚したあとに、急激に株価が下がります。しかし、「大企業だし何かしらの救済策が打たれるだろう」「大丈夫だろう」といった楽観的な見方があるのか、その後、急激に株価が上がります。

しかし、その後はやっぱり株価は下がり続けて、150日間にわたって、累積株価パフォーマンスがマイナスであり続ける傾向が平均的に示されていました。

株価が下がるのは危機感の表れ

つまり、株価が下がり続ける=投資家や多くの人がその企業に対して危機感を募り続けている、ということを示しているようです。

もちろん株価に影響する要因は業種、マクロ経済…沢山あります。しかし、それらの要因を統計的手法によって除いても、長期にわたって不祥事の影響が株価にマイナスに関係していました。

ただ、不祥事といっても、株主に評価してもらいたいがための粉飾決算、管理の滞りから起きる工場爆発や食中毒事件、自社製品を良く見せようとする虚偽記載まで、様々なタイプがあります。では、不祥事をタイプ別に分けて累積株価パフォーマンスを見てみると何が起きるでしょうか?

不祥事の種類によって株価のたどる道は違う

なんと、リコールや偽装表示といった、製品に関するものは、特に株価下落が顕著という傾向が報告されているのです。会社の利益の源泉である、製品信用を失うことは、長期に渡って株価も業績も非常に厳しくなることを示しているのです。

雪印乳業という会社を覚えているでしょうか?この会社は食肉偽装問題で、消費者の信頼を一気に失いました。その後は、事業事に解体されて買収・吸収されていきました。たしかに、一度信用を失った食品を好んで買う人はいませんよね…。

三菱自動車はどうなるの?

昨今では、三菱自動車の燃費不正問題が注目されています。「日産自動車の出資を受けるので大丈夫」とも言われていますが、本当でしょうか?

もしかしたら、事業別に整理し、規模縮小を行っていくかもしれません。そうなった場合、三菱自動車に製品を納入している企業や、取引先はどうなるでしょうか…。

自分の勤め先、または取引先の上場企業がどのように世の中から評価されているのか、そのバロメーターとして株価をウォッチするのは、将来を見据えるうえで、必要な視点なのかもしれませんね。私も、自分事として、取引先企業の株価をウォッチしてみようとおもいます!

崔 真淑(さい・ますみ)
マクロエコノミスト。Good News and Companies代表。昭和女子大研究員。化粧品会社エイボン社外取締役。1983年生まれ。神戸大学経済学部、一橋大学大学院(ICS)卒業し、MBA in Finance取得。

(提供: DAILY ANDS

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