Parent-child listing
(写真=PIXTA)

LINEが7月15日に東京証券取引所に上場することが決まった。LINEの親会社であるNAVER は韓国で上場しているので、親子上場という形になる。2015年には郵政3社が上場したが、これらもみな日本郵政株式会社の子会社であり、まさしく親子上場の状態である。ではなぜ、LINEは親子上場をするのか。親子上場のメリットとデメリットについて考えてみたい。

上場によって親会社NAVERとの関係が明るみに

NAVERは、韓国最大手のインターネット検索ポータルサイト運営する会社で、LINEはNAVERが100%出資する子会社である。LINEはこれまで非上場企業だったので開示されている情報は限られており、NAVERとの関係が見えにくかった。今回LINEが上場することで、親会社NAVERとの関係がより明確になるだろう。今後、NAVERとの関係がLINEにどう影響するのかが注目される。

親子上場とは 親子上場ならではの上場審査も

親子上場とは、親会社と子会社が共に上場している状態のことをいう。国内市場で親子上場している場合もあれば、海外市場での親子上場の例もある。

親子上場に関する上場審査としては、次のような項目が挙げられる。(1)親会社などが、子会社の不利益となる取引を強制・誘引していないこと。(2)グループ内取引と、グループ外取引で取引条件が著しく異ならないかどうか。(3)子会社が独立して事業をなしえるかどうか。

親子上場のメリット・デメリット

では親子上場にはどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。親会社・子会社それぞれの立場から見てみよう。

●親会社の立場のメリット

  • 市場で子会社株式を売却することで資金調達をすることができる。
  • 上場子会社を多数持つことで、グループとしての存在感を強めることができる。

●親会社のデメリット

  • 親会社と少数株主との間で経営方針が異なる場合、対立関係が生じ意思決定が遅れる。

●子会社の立場メリット

  • 親会社の築いた信用力を利用することで、借入等の資金調達がしやすくなる。
  • 親会社が築き上げたブランドカを利用することで、子会社自身の事業展開がしやすくなる。

●子会社のデメリット

  • 上場により情報開示や内部統制報告などが求められるようになり、管理にかかる費用負担が増加する。
  • 親会社がグループ全体の利益を最優先する場合、子会社の犠牲の下に自己の利益を追求し、その結果として子会社の少数株主の利益が害されるという利益相反の問題が生じる場合がある。

このように、親子上場にはメリットも多くあるものの、少数株主が不利益を被る可能性があるというデメリットもある。

アメリカなどでは、支配株主(この場合親会社)が他の株主に対して信認義務を負う、という理論が判例により確立されている。そのため、支配株主である親会社がグループ全体の利益を優先させるなどの理由で、子会社の他の株主の犠牲を伴って自己の利益の追求を行った場合には、子会社の他の株主らから損害賠償訴訟をおこされることもあり得る。

だが日本ではそのような理論は確立していない。アメリカに比べると親子上場が多いのはこのためだ。欧米では、先述したようなガバナンスや利益相反の観点から親子上場に対して批判的な見方をする人が多く、親子上場はほとんど見られない。

過去の親子上場事例 ソフトバンクやヤフーなども

過去の親子上場の事例を見て行こう。わかりやすい過去の事例としては、NTT(親) <9432> とNTTドコモ(子) <9437> やソフトバンク(親) <9984> とヤフー(子) <4689> などがある。いずれも有名企業であるが、ガバナンスよりも親子上場によるキャピタルゲインの獲得や資金調達の柔軟性の方がより優先されるべきとの経営判断がなされていると思われる。

また、LINEと同様インターネット関連企業の例としては、GMOインターネット <9449> がある。GMOインターネットは、東証1部に上場しているインターネット関連事業を手掛ける企業で、その子会社・関連会社であるGMOペイメントゲートウェイ <3769> 、GMOアドパートナーズ <4784> 、GMOペパボ <3633> 、GMOクリックホールディングス <7177> 、GMOリサーチ <3695> 、GMOTECH <6026> 、GMOメディア <6180> はいずれも上場している。GMOグループは1991年創業の比較的新しい会社なので、信用力を高めるためには上場することが有効と判断したのだろう。

このように、子会社が上場すると、子会社独自の事業展開がしやすくなる反面、その裏側には親会社の利益を優先する構図が存在することもある。親子上場している子会社に投資する際には、子会社だけでなく、親会社の業績や経営方針にまでよく考えを巡らせる必要があるだろう。