Concierge
(写真=PIXTA)

先日、ある有名芸能人夫妻が住む都内のマンションに女が不法侵入した事件が話題になった。ワイドショーでも盛んに取り上げられたその理由は、犯人が夫妻の住むマンションのコンシェルジュであり、忍び込みではなく合鍵を使って侵入したとみられたからだ。

週刊誌の報道では、容疑者は管理会社のパート従業員であった。「コンシェルジュ」といっていいのか疑問があり、その芸能人に対してストーカーまがいの行為をしていたということから、これはかなり特殊なケースだろう。

しかし、はからずも注目を集めることとなった「コンシェルジュ」。最近ではそのサービスを提供するマンションが増えているという。コンシェルジュとは何をしてくれるのか? また、どんな存在なのだろうか?

いわゆる「管理人」以上の役割が求められる

本来、「コンシェルジュ(concierge)」とはフランス語で「管理人」の意味だ。しかし日本のマンションにおけるコンシェルジュは、管理人とは違った役割を与えられていることが多い。

おおまかに分けると管理人は建物の点検や清掃などの、マンション維持管理業務が主で、コンシェルジュは住人への秘書的なサービスが主となる。マンションのエントランスで来訪者の受付・案内や共用施設の予約受付、宅配便の発送受付やタクシー・ハイヤーの手配のほか、荷物を預かったり、デリバリーサービスの紹介、車の鍵を預かって駐車場への出し入れをしたりと、その業務は多岐にわたる。

サービスの時間帯はマンションによっても異なり、平日の昼間だけというところから24時間年中無休でサービスを提供するコンシェルジュもあり、内容もさまざまである。

コンシェルジュがいるメリット

では、具体的にコンシェルジュがいることでどのようなメリットがあるのかを紹介しよう。(マンションによってはサービスが異なるため、対応していない場合もある)

● 日常生活のサポート
コンシェルジュがいれば、日常生活の細かな手続きや家事の一部を任せることができる。先にも述べたように、クリーニングやデリバリー、タクシー、宅配便など様々な受付、予約、手配を代わりに行ってくれるのだ。その結果自分の時間が確保できるので、毎日忙しい経営者やビジネスパーソンにはピッタリだろう。

● 防犯効果
エントランスに常に人がいることで、防犯上の効果が生まれる。コンシェルジュ側も住人の顔をだいたい覚えているものなので、怪しい人物が敷地内にいれば気付くことができる。子供や高齢者のいる家庭にとって、コンシェルジュがいるという安心感は大きなものだろう。

その他、「夜遅くに帰ってきてコンシェルジュがいると、ほっとする」という声もあり、住人にとっては安心できる存在となることもある。

● 困ったときの窓口
居室内の不具合が見つかった場合、誰に連絡したらいいかわからない場合もある。そんな時にコンシェルジュに相談すれば、各業者の手配を行ってくれる。共有部分の不具合については、なかなか自ら業者への連絡をしづらい場合もあるが、コンシェルジュがいれば気軽に相談できる。困ったときにすぐ相談できる窓口なのだ。

「管理が甘くなっているマンションがあるかも」と専門家

住民の生活に密接にかかわるコンシェルジュではあるが、とはいえ「分譲マンションでコンシェルジュが合鍵を持つことはない」と専門家は断言する。

「ご高齢の方で万が一の時を考えて等、やむを得ない場合は例外ですが、もし預かるとしても厳重に管理され、勝手に取り出せないようになっているはず。しかし、『その時にいる人が対応できるように』という理由をつけて、なし崩し的に管理が甘くなっているマンションはあるかもしれません」というのが実態のようだ。

コンシェルジュのサービスの経費は、毎月支払う管理費に含まれる形で住人が支払っている。利用頻度に応じて管理費を変えることは現実的ではないため、サービスを利用しない住人は不公平感を感じるかもしれない。サービスを利用している場合でも、そのサービス内容やクオリティが意に添わないこともある。

しかしマンションを購入している場合、それを理由に簡単に引っ越すわけにはいかなくなる。すると、サービスに不満を抱えたまま、高い管理費を払い続けることになってしまう。

「コンシェルジュがいる」だけでは付加価値にならない?

コンシェルジュがいるマンション自体は、実はそこまで珍しくはない。大手住宅情報サイトで検索すると東京都内だけでも500以上の物件がヒットする。

例えば江東区豊洲にある築7年の48階建てタワーマンションは、24時間有人管理で5重のセキュリティチェックシステムが導入されている。9階、57.78平方メートルの1LDKで販売金額は4,790万円だ。辰巳駅を最寄りとする42階建てのマンションも24時間の有人管理がある。ラウンジやキッズルームも備えるファミリータイプだが、築8年の13階71.03平方メートルの2LDK で4,980万円という価格だ。もちろん上を見ればキリがなく、赤坂にある45階建ての築8年のタワーマンションは、18階66.13平方メートルの1SLDKで1億1,750万円いう価格になっている。(2016年6月15日時点の空室情報より)

確かに今までは、「コンシェルジュがいる」だけでマンションの付加価値を高めてこられたかもしれない。しかし、さらにコンシェルジュ付マンションが増えることが予想され、今後はサービスの内容や専門スキルの高さが問われるようなるだろう。(提供: 百計オンライン

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