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(写真=PIXTA)

2015年1月1日、相続税の基礎控除が引き下げられました。

雑誌などのメディアで節税対策が特集としてたくさん組まれる中、相続税の増税が重くのしかかる富裕層の間では、効果的な対策として不動産を活用した方法が用いられています。

中でも最近注目されているのが、土地を保有する富裕層を対象に金融機関が提唱する「アパートローン」と呼ばれる不動産担保融資を活用した方法です。銀行融資とは無関係に思える富裕層がなぜ高齢になってから融資を受けて、不動産を購入しているのでしょうか。

富裕層がなぜ借金を? 債務控除での節税

お金持ちのことを「富裕層」という言葉で表現することが多いかと思いますが、具体的にはどのような人たちのことなのでしょうか? 一般的には「超富裕層」が金融資産5億円以上、「富裕層」が同1億円~5億円と定義されており、日本には120万~140万人規模で存在していると言われています。

お金に余裕がある富裕層であれば、わざわざ銀行から融資を受けて、金利を支払う必要はないように思えるのですが、実はこれも立派な相続税対策の一つなのです。

相続税を計算する際には、未払いだったローンなど「負の遺産」を、遺産の合計から引く「債務控除」という制度があります。このため、銀行から融資を受けてアパートなどを建設するとその借入金分が控除され、相続税の課税価格は下がるため一時的な節税効果が期待できるのです。

遊休地に賃貸アパートなどを建設して節税

青空駐車場などに利用していた遊休地に、融資を受けて賃貸アパートなどを建設した場合、債務控除のほかに、土地の相続税評価額を下げられるという利点が生まれます。

銀行預金や保険金など場合は、その金額に対してきっちりと課税されますが、こうすると不動産評価額は時価よりも3~4割程度低く評価され、建てたアパートを賃貸すると、さらに評価を下げることができるのです。

具体的な事例で考えてみましょう。

相続税評価が2億円の土地に銀行から1億円を借り入れ、1億円の賃貸アパートを建設したとします。この土地は貸家建付地と評価され、相続税評価額は2割引(1億6,000万円)となります。また、建物の相続税評価額は賃貸アパートの場合、建築価額の6割引(4,000万円)となります。

賃貸アパート全体の相続税評価額は、土地と建物の相続税評価額を合計した2億円(1億6,000万円 + 4,000万円)です。さらに債務控除制度により、アパート建設のために銀行から借り入れた1億円を差し引けるので、評価額は1億円となります。

このように借金をしてアパートを建てると、相続税評価額は大幅に下げることができるのです。

相続税対策のポイントは、いかに相続財産を減らすかということです。特に相続財産において土地の割合が多い場合は、相続税節税のための土地活用を考えるべきでしょう。

賃貸マンションなどの建設で固定資産税も優遇

遊休地に賃貸アパートなどを建設するメリットは、ほかにもあります。

日本の場合、住居用の土地や建物に対しては、固定資産税が優遇(最大6分の1まで)され、賃貸アパートなど家賃収入が発生する「事業」として土地活用を行った場合は、固定資産税を経費として計上することができます。

また、アパート建設のための借入金に対する利息も経費計上できますし、建物部分は、経年劣化の観点から物件の耐用年数を基準に「減価償却費」として経費計上が可能です。

借入金を利用してタワーマンションを購入する節税法

土地を所有していない富裕層の方は、節税対策としてタワーマンションの高層階を購入するケースが多いようです。

マンションの固定資産税評価額は、部屋の面積が同じなら高層階でも低層階でもほぼ同じで、眺望や日照代はほとんど反映されません。高層階になればなるほど売買価額が高くなり評価額との差が大きくなりますので、相続税対策として効果が出やすいのです。

賃貸して収入を得ている場合は、その効果はもっと大きくなります。

例えば、4億円の相続額がある方が、タワーマンション購入のために2億円の借金をすると、上述の「債務控除」適用により2億円に圧縮でき、さらに借入金の2億円で節税効果がありそうなタワーマンションを購入すれば、場合によっては相続税を1円も払わなくて良いというケースも考えられるのです。

もちろん、相続した配偶者や子供は借金も一緒に引き継ぐことになります。借入金で購入したタワーマンションで元本や金利が返済できれば、もしくは将来的に物件の価値が上がって借入金よりも評価が高くなれば、結果的にあなたの子供は多額の相続税を支払う必要はまったくないのです。

借財節税の注意点

節税対策のために、借金でアパートなどを建設する場合は、需要・立地・環境・収支などの分析を徹底的に行い、厳格な収支計算のシミュレーションをお勧めします。不動産資産は現金化や分割がしにくい資産で、価格も経済の動きに敏感です。これらのリスクを十分考慮した上で、借財節税による相続税対策を行いましょう。

タワーマンション節税に関しては、最近国税庁の監視が強化されているので、マンションの購入金額と評価額との差額が大きい場合は注意して下さい。(提供: TATE-MAGA

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