国会,憲法,財政
(写真=PIXTA)

自民党政権公約では、まだ2020年度の基礎的財政収支の黒字化の財政再建目標が、堅持されている。しかし、2014年の公約の第一項目が「経済再生・財政再建」だったのに対し、今回は「経済再生」となり財政再建の文字が消えた。政府とともに「経済再生なくして財政再建なし」という財政再建より、経済再生を重視するスタンスに明確に転換されている。

金融政策から財政政策へ その柱は地方創生と災害対策

景気対策としては金融政策から、財政政策へ大きく傾斜していくだろう。財政政策の柱となるのは、自民党政権公約で示された「地方創生の実現」と「災害に強い国づくり」。「地方にしごととひとを呼び込み、まちを活性化する総合的な政策を展開する。地方が自主的に取組みを進める政策を応援し、地方が主役の地方創生を実現する。」「大災害に向けた備えに取り組んでいく」と明言している。

地方分権の更なる促進、規制緩和が軸となろう。リニア中央新幹線の大阪への延伸前倒し、整備新幹線の建設推進も含まれるだろう。国土強靭化と社会資本整備の重要性が増し、1995年度の46.7兆円をピークに2015年度にはほぼ半減した公共投資も、底を打って増加を始めるとみられる。国が政府系金融機関を通じて、民間企業に資金を貸し出す財政投融資に関して、政府は政策金融の肥大化を止めるための縮小から、積極的活用への方針転換を既に決めている。

秋の臨時国会での景気対策に、3-5兆円程度の大幅な上積みとして、盛り込まれるだろう。財投の貸出金利も0.1%から0.01%程度に引き下げ、民間の投資を引き出そうとするとみられる。今回の選挙の結果で自民党政権公約の実現への推進力と可能性が増したと考える。

政策対応を精査し、出すべきところに資金を出す

財政政策が緊縮から拡大に転じ、消滅していたアベノミクスの推進力であるネットの資金需要が復活し、それをマネタイズする金融政策の効果も強くなること。それに加え、グローバルな景気・マーケットが安定感を増していけば、アベノミクスのリフレ効果(アベノミクス2.0)が再び強くなるだろう。

政策対応が不十分であれば、マーケットの失望が企業の業況感の悪化を加速させ、アベノミクスのデフレ完全脱却の試みを、失敗に追い込むリスクがかなり高まってしまう。2014年の拙速な消費税率引き上げなどによる財政緊縮により、アベノミクスのモメンタムが失われてしまったことの政府・自民党の反省は強い。増税で社会保障への信頼感が増し、生活不安が解消し景気回復を促進するという「安心効果」が虚構であった、と総括されたとみられる。

一方、市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止。これらを目的とした財政支出の増加が必要があると判断されたとみられる。