「結果にコミットする」ダイエットを謳って話題を呼んできたRIZAPグループ(RIZAP) <2928> と、SBIホールディングス(SBIHD) <8473> が、健康分野で手を組んだ。現在ではまだまだ知られていない健康増進物質である「ALA(5-アミノレブリン酸)」について、新領域の事業として業務提携を締結するもので、7月12日に共同で実施した会見で明らかになった。
ALAは人間の体の中では、栄養素を燃焼させたり、エネルギーを作り出したりする役割を果たす物質で、アミノ酸の一つ。人体を構成する約37兆個の細胞の一つひとつには、ミトコンドリアと呼ばれるエネルギーを作り出す器官があり、糖分や脂質からエネルギーや水分を作り出している。その働きを助けるのがALAだ。
SBIグループはかねてから、ALAの商用化を推進。同物質には、膀胱がんや、皮膚がん、子宮頸部前がん、アルツハイマー、パーキンソン病、糖尿病、現代の医療では治療困難な難病の一つでもあるミトコンドリア病への効能も期待されているという。
RIZAP会員への限定販売で売上は1億円超
SBIHDとRIZAPは今回、新しい業務提携として、ALAの関連市場の共同立ち上げを目指す。将来的にはさらに、医療・医薬まで提携分野を押し広げる方針も明らかにしており、ALAを中心にさまざまな分野での協働を図る。
両社はすでに、具体的な取り組みも開始。共同で開発したALAのサプリメントである「RIZAP ACTIVE」を7月1日に、RIZAPの会員向けに発売。即日完売しており、現在は例え買いたくても買えない状況で、追加の生産を進めているという。同製品の売上もすでに1億円を超えており、生産体制などが整えばより大きな売上も期待できそうだ。
RIZAPの瀬戸健代表取締役社長は、ALAの市場規模は数百億円を上回る見通しだとした上で、「RIZAPグループはALAの100億円市場の創造にコミットする」という。
両社の提携はほかの領域にも及ぶ。SBI傘下のSBIウェルネスバンク運営の医療法人・東京国際クリニックで、人間ドックとRIZAPを組み合わせたメディカルプランの提供を今年の3月から開始。東京国際クリニックの予防医療に関する知見と、RIZAPの運動指導・栄養指導などのノウハウを組み合わせて、健康関連の事業を推進してきており、今回の事業提携により、両社間の連携もさらに強まりそうだ。
中東での糖尿病治療や、日本の医療費の削減にも
両社が注目するALAは、単なる健康食に留まらない。糖尿病の治療や、普及した効果で健康な人が増加することで、2014年度には40兆円を超えた医療費の国庫負担も減少する可能性があるという。会見に続いて行われたトークセッションでパネリストらが指摘した。
同セッションには、SBIHDの北尾吉孝代表取締役執行役員社長やRIZAPの瀬戸氏のほかにも、ALAの研究者である、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科兼環境情報学部、兼医学部内科講座兼先端生命科学研究所ヘルスサイエンス・ラボ代表で、博士の渡辺光博教授や、SBIファーマの中島元夫取締役執行役員も加わり、ALAについてのコメントをそれぞれ披露した。
その中で、SBIHDの北尾代表取締役は、ALAを摂ることで「体温の上昇や、ツメが伸びるのが早くなった」と自身の経験を語った上で、中東地域での糖尿病治療への応用に対する期待に言及。「バーレーンでは糖尿病患者が多い。なかなか血糖値が下がらない人に、ALAを投与すれば血糖値が大きく下がった。中東での記者会見もテレビで報道されるなど注目を集めている」(北尾氏)と、ALA事業の国際的な展開を推進する見通しを語った。
同氏によれば、中東での糖尿病の人口は大きく、全人口の15〜18%にも上る。また日本のような国民皆健康保険は現地にはなく、政府が採用しさえすれば、大量の販売が見込めるという。
ほかにも、SBIファーマの中島取締役執行役員は、ALAの活用による医療費の削減への期待を指摘。ALAの摂取によりミトコンドリアが刺激を受け、老化を予防できる可能性もあり、年齢を重ねていても健康な人々が増えれば、医療費の縮小にも期待が持てる。健康保険という形で国庫からの支出で賄われている社会保障費の縮小にも寄与する形だ。
慶應義塾大学大学院の渡辺教授は日本の高齢社会での意義を解説。「日本は世界で最も高齢化が進んでいる。その中で、いかに老化疾患を制御し、健康寿命を長く保てるかが大きな問題で、世界中が見ている。ALAが広がり保険医療を削減できるのであれば世界に大きくアピールできるのではないか」と同教授は話した。
高齢化の進む日本で、老化の防止や社会保障費の削減、医療・健康市場といった今後も継続的に注目されそうな分野での両社の提携。11月には、両社の提携で作り出す商品の第二弾が登場する予定。どのように新たな市場を開拓していくのか、さらに相乗効果の見込めるさらなる取り組みを期待したい。(ZUU online 編集部)