月初、英国のEU離脱(Brexit)の余韻が続くなか、100円付近で推移していたドル円レートは、中旬から突如円安基調となり、足元では107円台前半に達している。英国での想定より早い新首相選出、雇用統計をはじめとする米経済指標の改善、日本の大規模な財政出動と金融緩和への期待などの材料により、「日米金融政策の方向感の違い」と「市場のリスク選好」という円安ドル高の条件が一旦揃ったためだ。
ただし、今回にわかに訪れた円安の持続性は期待できない。まず、日銀の追加緩和に関しては、一部でヘリコプターマネーの思惑が高まるなど、過度の期待を織り込んでいる。筆者も早期の追加緩和を予想するが、期待を超えることは至難の技だ。
また、今後はBrexit決定後の経済指標が出てくるが、英国を中心とする欧州の指標下振れなどからBrexitの影響への懸念が高まり、リスク回避の円高が再発する可能性がある。米国もBrexitの動向と影響を見極めるべく、しばらく利上げを見送るとみられ、ドル高エンジンも息切れしそうだ。従って、3ヵ月後のドル円は、105円を下回ると予想する。
ユーロ円は、今月上旬に110円に迫った後に切り返し、足元では118円台にある。ユーロ圏は英国と強い繋がりを持つだけに、Brexitの悪影響の波及が最も懸念される地域だ。今後はBrexitへの懸念再発やECBの追加緩和観測に伴うユーロ安圧力が予想される。3ヵ月後の水準は現状比で円高ユーロ安とみている。
長期金利は、一時▲0.3%付近までマイナス幅を広げた後、世界的なリスク選好地合いの中で▲0.2%台前半まで上昇している。ただし、今後は、英国を発端とするリスク回避地合いの再発や日銀の早期追加緩和によって再び低下に向かうと見ている。(執筆時点:2016/7/21)
上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所
経済研究部 シニアエコノミスト
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