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(写真=PIXTA)

現在、世界最大の時価総額を競い合っているのは、米国のアップルとアルファベット (旧グーグル) だ。直近では首位がアップル、2位がアルファベット、ウィンドウズのマイクロソフトと石油メジャーのエクソンモービルがその後に続いている (2016年6月24日時点) 。

ところが、とある企業が株式上場を果たせば一気にアップルやアルファベットを抜き去り、突出した規模で世界最大の時価総額になるものと見込まれている。それは世界最大の石油会社であるサウジアラビアの国営企業・サウジアラムコだ。同国のムハンマド副皇太子は衛星テレビ局・アルアラビーヤのインタビューにおいて、同社を国内の市場で上場させたうえで、その5%未満の株式を売り出す方針であることを明らかにしている。

2016年の時価総額を見ると、アップルは5,000億~6,000億ドルの間、アルファベットは5,000億ドル前後で推移している。これに対し、日本経済新聞の報道によると、ムハンマド副皇太子は上場後のサウジアラムコの時価総額が2兆ドル超に達すると見込んでいるとのことだ。

サウジアラムコの歴史

同社の前身は、米国企業によって設立された。米国の石油会社ソーカル (現シェブロン) がサウジアラビアにおける石油開発に乗り出し、1933年に利権を獲得した。その半分を購入したテキサコなども加わったうえで、1944年に社名をアラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー (略称:ARAMCO=アラムコ) に変更した。

1970年代に入ってからは、サウジアラビア政府も経営に参画するようになった。1988年には実質的な完全国有化を達成、旧アラムコの経営資源や権益を承継した国営のサウジアラビアン・オイル・カンパニーが誕生し、サウジアラムコと呼ばれるようになった。

前述のムハンマド副皇太子のインタビューによれば、上場によって獲得した資金は成長分野への投資などに充てられるとされており、原油に依存しすぎている同国の財政状況を改善させることが目的であるとうかがえる。

言い換えれば、足元で原油の需要が減少傾向にあることがサウジアラビアの財政を悪化させ、サウジアラムコ上場による市場からの資金調達を迫られる結果にもなったようだ。英国の石油メジャーBPが発表した「Statistical Review of World Energy 2016」を見ても、原油の需要には陰りがうかがえる。