原油価格の推移

中国をはじめとする新興諸国の原油需要は2008年9月のリーマン・ショック後に落ち込んだものの、再び経済が成長基調を示し始めたことに伴って増加に転じた。ところが、経済が減速傾向に転じた2014年には原油需要が頭打ち気味になり、同年後半からの原油価格は下落基調が顕著となった。底打ち感が強まってきたのは、2016年4月頃からである。原油価格の推移は、こうした需要の動向を端的に表している。

欧米がイランに対する経済制裁を解除したことも、原油価格に影響をもたらしたと考えられている。ロイターなどの報道によれば、解除を受けて同国は2016年に入り、原油の増産・輸出拡大を推進しているようだ。供給が増えれば、原油価格に下落圧力がかかるのは当然の現象だと言えるだろう。

加えて、「世界最大の石油消費国・米国が2017年までに世界最大の生産国となる」との予測を国際エネルギー機関 (IEA) が2012年に発表したことも、原油価格の動きに少なからず影響を及ぼしたとみられている。シェール革命と呼ばれる技術革新によって、米国内では硬い岩盤 (シェール層) の隙間に含まれた原油を従来よりも低コストで採掘できるようになった。

サウジアラムコがマーケットに与えるインパクト

サウジアラビアを筆頭とするOPEC (石油輸出国機構) は、米国の台頭に対抗してシェアを守るためには、生産コストの高いシェールオイルを原油価格の下落によって生産停止に追い込む必要があると判断した。原油価格の下落が進む中でも、なかなか減産に踏み切ることができなかったのはこのためだと、分析している識者もいる。その結果、原油価格は下落の一途を辿り、米国でもシェールオイル関連企業の業績が悪化するなど、いわば我慢比べのような状況が続いてきたといえる。

そして、サウジアラビアはサウジアラムコ上場という切り札を出すこととなったわけだが、史上最大のIPO案件ともなりそうなだけに、グローバルな規模で株式市場にインパクトをもたらす可能性が囁かれている。

まず、ネガティブインパクトに関しては、市場から巨額の資金を吸い上げれば、代わって他の銘柄が売られる可能性もある。例えば、アラムコ株を購入するために保有銘柄を売却して購入資金に充てるなどが考えられるだろう。他にも、株価指数に連動するパッシブファンドなどは自動的に大型銘柄のアラムコ株を組み入れる可能性があるため、新規銘柄の組入分だけ他銘柄の投資額を減らすことに繋がる。

一方、ポジティブインパクトとしては、大型IPOが市場活性化の起爆剤にもなりうるという見方もある。株式投資に対する世間の関心を高め株式市場に資金を呼び込む可能性もあるためだ。需要サイドも増加して市場の需給に厚みが出ることに繋がるだろう。

いずれにせよ、大型のIPOは株式需給面に大きな影響を与えるため注意が必要だ。(提供: 大和ネクスト銀行

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