「相続」というデリケートな問題は、ご両親が元気なうちはなんとなく敬遠しがちで、あまり家族の間で話題に上らないことが多いのが実情です。
また、「そこまで資産家じゃないから、相続税が出たとしてもほんの少しだろう」と楽観視して、どうにかなると放っておいてしまう方も。
しかし、事前に対策を練らなかったことで、「相続」を「争続」にしてしまう可能性が高いのをご存知でしょうか?今回は、税理士事務所勤務経験のある筆者が、相続とはどのように話し合い進めていくべきなのか、どんなことで揉めてしまうのかなどを実際にあった事例からご紹介します。
実際にあった、相続で揉めた相続事例
実際にあった2つの相続事例についてご紹介します。
(1) よかれと思って打っておいた策が不満の種になったAさん一家
Aさん一家のお父様は数年前にすでに亡くなられていて、お母様の相続が発生しました。お父様ご健在の時から、長男夫婦は実家でご両親と同居していました。
お父様の相続の際に、相続税は相続人が多いほど税金のかからない部分が増えるということが分かったので、長男夫婦とお母様は相談して長男の妻を養子にしていました。そしてお母様の相続の際、資産の全てを法定相続分通り(今回の場合、長男・長女・次男・長男の妻の4人が4等分)で分けました。
長男と長男の妻は、実家と預貯金の一部、長女と二男は預貯金という具合です。実家の価値も、相続税の規定に則って評価しています。
しかしここでトラブルが発生したのです。長女・次男から、「長男の妻が相続人になったことで、税金は減らせたかもしれないが、自分たちの取り分も減ってしまった」と言われてしまったのでした。
確かに、基礎控除枠も増えることは事実ですが、3人で分けるはずたった資産を4人で分けることになると、当然一人の取り分は減ってしまいます。そして長男は、妻を養子にしたことをきょうだいに話していなかったのです。
この場合、どうしておくべきだったでしょうか? 筆者は、長男の妻を養子に迎える前に、相続人全員で話し合っておく必要があったと思います。
このように、税金の制度上は実質節税ができたことになっても、相続人全員の意思疎通ができていないまま行った対策は、後々の親族関係にしこりを残すことになりかねません。元は仲が良かったきょうだいでも、金銭的な不満やわだかまりがあると、関係が悪化しがちです。
(2) とりあえず「共有」が問題になったBさん一家
Bさん一家の相続は、預貯金がほとんど残っていないケースでした。そのためすべての土地をきょうだいが共有で相続して、誰も住まなくなった実家と、駐車場3か所のうち1か所を売却して現金化し、納税しました。
相続税の納付は無事に済みましたが、数年後、残った2か所の駐車場を、長女・次女は賃貸アパートを建設して有効活用したいと主張しましたが、長男がそれを拒否し、揉めています。
相続は原則現金納付ですので、このケースのように不動産しか相続財産が無い場合は、売却して現金化するしか納税の方法がありません。納税まではうまくいきましたが、その後の土地の使い方で意見の相違が出たことにより、きょうだい仲が険悪になってしまいました。
共有で相続した場合、共有者全員の同意が無ければ、土地の使い方を変えたりすることはできません。また、いったん共有にしたものを、また分け方を変えようとすると、余計に税金がかかってしまいます。
お母様が元気なうちから相続についての対策を話し合い、事前に不動産の一部を売却して現金化しておき、不動産はなるべく単独で相続できるように工夫しておくべきでした。
大切なことはいつも、事前の話し合い
相続時、相続後にきょうだい間で揉めてしまった事例をご紹介しました。2事例ともお読みいただいて分かるように、どちらも事前に話し合い、対策を練っておけばスムーズに事が運んだ可能性が高いのです。
明らかに相続税がたくさんかかるだろうな、という資産家の方々は、事前の対策をよく練り、遺言書もしっかりと準備されている方が多いです。そのため揉めることはそこまで多くありません。日頃から、税理士などの専門家に「しっかりと対策を!」と口酸っぱく言われていることが影響しているのでしょうか。
しかし2015年の相続税法改正以降、普段税理士など相続の専門家と関わる機会のない方々でも、相続税の対象になる可能性が高くなっています。
知っておきたい、相続の基本の「き」
あなたの家族が「争続」となってしまわないために、最後に相続税の基本的な知識について簡単にご紹介しておきます。
(1) 申告期限は亡くなった日から10ヵ月
相続税は、被相続人が亡くなった日から10ヵ月以内に申告しなければなりません。多くの方が、四十九日の法要のあとから具体的に税理士や司法書士などの専門家との話し合いを始めますので、実質8か月程度の期間で、財産の分け方や税金の計算・納税までを行います。
(2) 全額現金で納付しなければならない
相続税は、原則として現金で一括払いです。特別な事情がない限り、不動産での納付や分割納付は認められません。
(3) 相続税額は、相続人の数で大きく変化する
相続税は、相続人の数に応じて「相続税基礎控除」という税金のかからない部分があります。相続人数が多ければ多いほど、税金のかからない部分が増えることになります。
里帰りしたときは、話題にしてみましょう
8月のお盆の時期には、家族でお墓参りに行かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしよろしければ、今のうちからご家族と相続について話し合ってみてはいかがでしょう。
話し合うときは、まずはご自身、またはご両親に相続税がかかるのかどうか確認することが大切です。そして、相続税がかかる場合は、事前に相続人全員で時間をかけて誰が何を相続し、税金はどのように支払うのかまでを決められるとベストです。
Aya
1989年埼玉県生まれ。外資系ホテル、不動産鑑定士・税理士事務所営業職を経て、現在はFP事務所MYS所属FPとして執筆を行う。初心者にも分かりやすい記事をモットーに活動中。
(提供: DAILY ANDS )
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