アベノミクスの第3の矢で成長戦略の一つに「女性の活躍の推進」があります。日本企業の女性活用が世界の中で遅れているためです。

2016年4月から「女性活躍推進法」が施行されました。女性が職場において十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するため、大企業に対し、女性がどのくらい活躍できているのかといった実態を調査、分析し、課題を明らかにすることを義務づけたものです。今後ますます女性が活躍している会社への注目度が高まるでしょう。

こうした会社と株価に関係はあるのでしょうか?

女性重視はダイバーシティ、CSRから世界的な流れ

女性の活躍を支援するのは世界的なダイバーシティの一環です。ダイバーシティとは、多様的な性別、人種などを積極的に活用していこうという流れです。

企業が社会に対して責任をもち、社会とともに持続的に発展していくための活動をCSR(企業の社会的責任、Corporate Social Responsibility)といいます。CSRに対する企業の取り組みを評価するのに、よく使われるのはスコアリングといった手法です。定量化出来るデータ、たとえば、女性社員数、女性社員比率、女性平均勤続年数、女性管理職比率などを、それぞれランキング付けしてスコアリングし、総合点で企業を評価します。企業の社会的責任のCSRを考慮したファンドの残高は世界的に増えてきています。

女性登用に積極的な企業トップはイオンフィナンシャル

女性活躍推進法の施行を控え、東洋経済では、同社の「CSR企業総覧2016」のデータを使って「女性部長比率増加ランキング」「女性部長数ランキング」「女性部長比率ランキング」などを公表しました。

「女性部長比率増加」ではイオンフィナンシャルサービス<8570>がトップ。女性部長比率は2010年の2.6%(1人)から2015年には24.7%(76人)と22.1ポイント増加しています。「女性部長数」では日本IBM<未上場>がトップ。女性部長は152人もいて、比率は12.6%になっています。「女性部長比率」では、パソナグループ<2168>がトップ。女性部長は51人いて、比率は32.9%になっています。

「女性活躍推進法」の施行で今後はこういった女性の活躍を評価するランキングを見る機会が増えてきそうですね。


経産省が認定する「なでしこ銘柄」

「女性活躍推進法」に先駆けて、経済産業省と東京証券取引所は共同で、女性活躍推進に優れた上場企業「なでしこ銘柄」を選定し2012年度より公表しています。

なでしこ銘柄は、上場企業を対象に、女性が働き続けるための環境整備が整っており、女性人材の活用を積極的に進めている企業を業種ごとにリストアップしたものです。2015年のなでしこ銘柄は45銘柄が上げられていました。

なでしこ銘柄制定以来、過去4年連続で認定されている会社は日産<7201>、東京急行<9005>、KDDI<9433>の3社です。過去3年連続が、カルビー<2229>、日立<6501>、ブリヂストン<5108>、トッパン・フォームズ<7862>、大阪ガス<9532>、ローソン<2651>の6社となっています。

なでしこ銘柄と株価の関係

なでしこ銘柄や女性の活躍支援をしているランキング上位の会社の株は、同業他社と比較して買われているのでしょうか?残念ながらまだ明確な答えはでていません。株価をサポートする要因になっているとは言いがたいでしょう。これは女性活躍の銘柄だけでなく、CSR投資関連のファンド全体に言えることです。

ただ、それでもCSR投資が世界的に急増している背景は、社会的貢献度の高い会社に資産を投資するといった投資原則が大事だと考えられているからです。企業にとってCSRは、コスト増以外のなにものでもありませんが、そうした努力を惜しまない会社を応援していくことの意義を投資に見いだしているのです。

女性にフォーカスした投資信託は150億円以上

女性の活躍にフォーカスした投資信託が増えてきています。

2014年に設定された、女性の活躍を支援するファンドである三井住友アセットの日本再興戦略株式オープン2014 『愛称:なでしこ』は残高が43億円。明治安田投信が運用する女性活躍推進ファンドは残高が39億円、インベスコの女性力フォーカス日本株式ファンド『愛称:株小町』は残高が30億円、BNYメロンの女性活力日本株ファンドは30億円、ニッセイアセットの日本株式セレクト -アクティブ・ウーマンが13億円、大和投信の女性活躍応援ファンド 『愛称:椿』は9億円ほどの残高があり、女性を支援する主なファンドだけで150億円を超える残高となっています。

モーニングスターが毎年優れた投資信託を表彰する「ファンド・オブ・ザ・イヤー2015」では、BNYメロン・アセット・マネジメントが設定・運用する「女性活力日本株ファンド」が国内株式中小型部門の優秀ファンド賞として表彰されました。

「女性の活躍」をテーマとし、「女性の登用や機会均等などを推進」、「女性向けの商品・サービスを展開」、「女性の社会進出に伴い間接的に恩恵を受ける」という3つの着眼点から業績、成長力、割安性を考慮し銘柄を選定しているようです。

こうした女性を重視する会社の株やファンドに投資して、女性の活躍を株主として応援することも、株式や投信購入の大事な意義と言っていいでしょう。

(提供: DAILY ANDS

【あわせてよみたい DAILY ANDS】
心が乱れなくなる。投資家マインドを鍛える5つの方法
#11 買った株が上昇!うれしいけど…「売り時」はいつ?
「女性管理職が増えると企業の業績がよくなる」本当の理由
投資だって、あなたらしく。「相場の神様」に愛される方法
最初の投資先にいかが「なでしこ銘柄」3社選んでみました