実質・名目GDP成長率、GDPデフレーター上昇率、すべてプラス

2016年度の本予算の公共投資が前倒しされたこと、1月の2015年度第一次補正予算の3.3兆円程度、そして4月の熊本地震の復旧・復興予算の1兆円程度が執行され、成長を押し上げたようだ。実質公共投資は、前期比+2.3%と2四半期連続で増加し、実質政府消費も前期比+0.2%と8四半期連続で増加した。

成長を押し上げるための財政政策の重要な役割が再確認された。

数字で確認すると、実質GDP前期比(+0.0%)に対する民間内需の寄与度が+0.2%、公的需要の寄与度が+0.1%、そして外需の寄与度が-0.3%となっている。年初までの原油価格の急落による交易条件の改善によりGDPデフレーターは前期比+0.2%上昇した。2014年の消費税率引き上げ後の消費低迷による物価下押し圧力、そして円高の影響を上回ったとみる。

結果として、名目GDPは前期比+0.2%(年率+0.9%)としっかり拡大した。名目GDPを縮小から拡大に転換させたのがアベノミクスの最大の成果であるが、その動きに全く変調はない。

2015年度は8年ぶりに、実質GDP成長率(+0.8%)、名目GDP成長率(+2.2%)、そしてGDPデフレーター上昇率(+1.4%)がすべてプラスになった。

円高圧力が低下し、2017年はデフレ脱却実感が訪れるだろう

グローバルな景気・マーケット動向がまだ不安定な7-9月期の実質GDPは若干のプラス成長にとどまる。だが、グローバルな安定と事業規模28兆円程度の財政拡大の効果(2017年度末までに実質GDPを1%程度押し上げると予想)が出始める、10-12月期から年率+1%超へ加速していくと考える。

米国景気のしっかりとした拡大がFEDの利上げの進展につながり、円高圧力は自然に減じていくだろう。グローバルな景気・マーケットの不安定感を各国の政策対応で乗り越え、先進国の堅調の成長がなんとか持続している間に、その好影響が波及して新興国が減速した状態から脱し、輸出と生産のサイクルも持ち直していくと考えられる。

2016年の実質GDP成長率は、+0.5%程度と潜在成長率なみである。2017年には+1.3%程度と大きく上回り、失業率低下が示す労働需給の引き締まりが総賃金の拡大を加速していき、アベノミクスによるデフレ完全脱却の動きの再開が、感じられるようになるだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)