どんな投資信託を買って良いの分からないーーお客様からそのような相談を受ける機会が増えている。日銀のマイナス金利政策が追い打ちを掛け、深刻な運用難に陥っているお客様は少なくない。
一方で「変わり種投信」が注目を集めている。「グローバル・マクロ」と呼ばれる海外ヘッジファンドが得意とする運用戦略を取り入れた投信や「大災害債券」の投信運用などだ。私の銀行でもそれらの導入を望む声は多い。
銀行内部でも高まる「ベンチマーク不要論」
変わり種投信の多くには「ベンチマーク」が存在しない。
「投資家の関心は、儲かったか、損したかだ。ベンチマークなんて必要ない」そんな意見が私の銀行内部でも高まっている。絶対リターンを追求するとは、そういうことなのだろう。
しかし、ベンチマークは本当に不要なのか?
残念ながら「ベンチマークの重要性」を理解していない銀行員は実に多い。そんな銀行員に限ってベンチマークは不要と決めつけがちだ。彼らの存在が怪しげな投資信託を助長し、顧客資産を不用意にリスクにさらしているのではないかとさえ思えてくる。
ベンチマークのない投資信託が増えている
本来ベンチマークは測量に用いる際に「基準となる」水準点を示す用語であった。転じて投資の世界では、運用状況の善し悪しを測る「基準(指標)」を意味する。
国内株式の代表的なベンチマークは、TOPIXである。運用成績がTOPIXを上回っているか、下回っているかでその投資信託の善し悪しを測ることができる。
私は、ベンチマークは「運用者と投資家の重要なコミュニケーションツール」と考えている。投資家はその投資信託を購入するにあたり、ベンチマークに対しどのような大きさで、どのような性質のリスクがあるのか知ることができるからだ。
たとえば、ベンチマークであるTOPIXの下落局面で、投資信託の基準価額の変化は「TOPIXと比較して」大きかったのか、小さかったのか。それを知ることで運用者の腕前を評価することができる。
目論見書にはその投資信託が「何をベンチマークとしているのか」が記載されているはずだ。ところが、最近はベンチマークを設定しない投資信託が増えている。残念ながら、そのことを問題視する銀行員は少ない。