「民法改正」をめぐるニュースが8月中旬に報じられた。ここ数年話題になっている債権法の改正の話ではない。「民法が定める成年年齢を20歳から18歳に引き下げる」という内容の民法改正案が、2017年の通常国会に提出されるというのだ。
「18歳成人」改正案の背景は何か。そして「18歳成人」で具体的に大きく変わる可能性のある場面のうち、相続における「遺産分割」について解説する。
今なぜ「18歳成人」なのか
成年年齢が「18歳」になるのは、何も急に始まった話ではない。
始まりは2007年5月に成立した、いわゆる国民投票法(日本国憲法改正手続に関する法律)だ。この法律によると、国民投票の投票権を有するのは、「満18歳以上の国民」であるとされた。
これに続けと言わんばかりに2015年6月、公職選挙法が改正され、18歳でも選挙において投票できるようになったことは記憶に新しいのではないだろうか。
「18歳成人」が取り沙汰された理由の一つに、「諸外国の制度との適合性」がある点も忘れてはいけない。欧米諸国はもとより、中国やロシアといった主要国までもが私法上の成年年齢を「18歳」としている以上、日本も「18歳をもって成人とするべき論」が湧き上がってきた。まさに国際的潮流ともいえるのだ。
「18歳成人」で変わる日常
成年年齢を18歳とすることで変わることは多々ある。代表的なものは、18歳・19歳の若者の「未成年者取消権」がなくなることだ。
たとえば19歳の若者がバイクを購入するとする。20歳を成年年齢としている現民法下であれば、バイクの購入には親権者(親)の同意を得て若者自身が契約するか、あるいは親権者が青年を代理して契約しなければいけなかった。
同意がない、もしくは代理による契約ではないのであれば、契約は取消すことができる。未成年者側が自身の都合で「売買契約を取消すので、バイクを返品します。お金を返してください」と主張をして、契約をなかったことにすることが可能なのだ。
「18歳成人」の民法改正が成立した場合、19歳の若者は契約を取消すことができなくなる。判断能力が乏しいであろう若年層を保護する民法の役割が、ここで機能しなくなるのだ。「未成年者取消権」は未成年者を保護するための制度であって、18歳・19歳の若者からこれを奪うことは許されないとして、「18歳成人」に反対する主張があるのはこのためだ。