金融緩和×財政緩和で、物価上昇2%の実現率を上げる
片方では原油価格の下落の悪影響が大きいといい、もう片方では原油価格の下落の好影響が大きいというのでは、マーケットの理解を得るのは困難であろう。理論的にも、実証的にも、早期に2%の物価上昇が実現できなかった主犯は、緊縮財政による需要停滞であることは明らかだろう。
インフレ期待のリアンカリングの途上で、緊縮財政を行ったことは大きな間違いであっただろ。また、日銀の金融政策に過度な負担をかけ、マーケットの歪みを大きくしたことは確かであろう。緊縮財政は将来の財政赤字・社会保障への不安を解消するため支出増を促すという、安心効果への過信を反省できるのかどうか注目である。
既に、政府は財政緊縮から財政緩和に転じ、日銀も7月の決定会合で「きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えている」と異例の声明を出し、ポリシーミックスの考え方に前向きとなっている。
ポリシーミックスを前に押し出した、2%の物価上昇への新たなミットメントに対する、マーケットの信任を維持するためにも、原油価格の下落だけに責任を押し付けない、マーケットの理解の得られる検証とすることは、極めて重要であろう。
様々なしがらみを解いて、緊縮財政により抑制されてしまってきた、現行の金融緩和の景気刺激効果が、財政緩和とのポリシーミックスにより強くなり、2%の物価上昇の実現性が今後は増していくと言えば、簡単なように思われる。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト
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