9月20・21日の金融政策決定会合で日銀は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行う。
日銀的には主犯は原油価格下落、だがマーケットは納得難しい
8月27日のジャクソンホールでの黒田日銀総裁の講演では、早期に2%の物価上昇が実現しなかった原因について、簡単な検証がなされている。
日銀の大胆な金融緩和は、日本のインフレ期待を2%程度へ持ち上げ、そこにアンカーすることが目的であった。このリアンカリングの途上で、原油価格の大きな下落が起き、外的なショックに対する頑健性がまだ低いため、インフレ期待が後退してしまったことが指摘されている。更に、リアンカリングの途上である日本のインフレ期待は、足元のインフレ率の影響を受けやすい「バックワードルッキング」の力が、強いことも指摘されている。
これらを総合すると、まだ原油価格の下落を主犯とするようなこれまでの論理から脱することができていないようだ。
マーケットの注目は、原油価格の下落のショックから、需要低迷による物価下落圧力に、既に移っている。下落してしまっている、、原油価格の影響を含むコアCPI(除く生鮮食品)だけではなく、コアコアCPI(除く食料とエネルギー)まで上昇がなくなってしまうリスクが出てきているからだ。
総括的な検証で、日銀が主犯を原油価格の下落から需要低迷に変えなければ、マーケットの理解は得られないと考えられる。
主犯は緊縮財政、原油価格下落のマイナスを加速させた
企業部門が貯蓄超過である中、その貯蓄超過を上回る財政拡大により、ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支、マイナスが強い)を生み出し、それを間接的にマネタイズする日銀の金融緩和の効果も強くなり、総需要とマネーが拡大し、インフレ期待を持ち上げる必要があった。
実際には、消費税率引き上げを含む緊縮財政により、ネットの資金重要を逆に消滅させてしまい、日銀の金融緩和の効果は失われ、ポリシーミックスが機能せず、総需要は停滞し、インフレ期待が後退してしまったのは、明らかなように思われる。
日銀が推計するように、2014年度の実質GDP成長率が内閣府の推計よりかなり高いのであれば、その理由は、原油価格の下落がもたらした企業収益の拡大などの好影響が、消費税率引き上げによる、家計の実質所得減少の悪影響を上回るほど大きかったことを意味する。
講演では、原油価格の変動は通常は一時的であるとされ、長期的なインフレ予想に対しては、持続的な影響を及ぼさず、米国ではそれが成り立っていると指摘されている。そうであれば、好影響が大きかった原油価格の下落が、緊縮財政がなければ、日本のインフレ期待だけを大きく後退させることはなかっただろう。