官主導の開発事業、全国で失敗が続出
甘い収支予測や身の丈に合わない開発が原因となり、自治体が負の遺産を抱えることになった例は青森市だけではない。失政のつけは自治体の財政にはね返り、住民が払うことになる。
今年1月には、山梨県南アルプス市の観光農園運営会社「南アルプスプロデュース」が経営破綻した。市が筆頭株主として5億円以上を貸し付け、2015年6月から観光農園を営業したが、開業早々から赤字が続き、わずか7カ月で行き詰った。
負債総額は約7億4000万円。農園カフェや地場産品直売など他県の成功例を模倣しただけのメニューしかなく、集客できなかったわけだ。甘い収支見通しが負の遺産を生んだ例といえる。
身の丈に合わない開発の失敗例は大阪にある。大阪市が1200億円もの巨費を投じて1995年に開業した「大阪ワールドトレードセンタービルディング」は、空きフロアが相次いで早々と経営破綻した。今は大阪府に買い取られ、咲洲庁舎となっている。
地下3階、地上55階の高層ビルを建てたのは、市の中心部から遠く離れた住之江区の人工島。バブル崩壊で周辺の開発が進まず、進出するオフィスが少なかった。
稼ぐためのノウハウに乏しいのは自治体の弱点だ。事業計画を先に作り、帳尻合わせの収支予測を後から策定する古い手法もいまだに生きている。こうした考えを捨て去らない限り、アウガのような負の遺産が今後も後を絶たないだろう。アウガの破綻は官が主導した再開発の限界を見たような気がする。
高田泰 政治ジャーナリスト
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関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。