登記の有無もその不動産の価値である

それでも未登記部分のある不動産を投資物件として購入した後に起こる事態を想定してみよう。

問題① 売却しにくくなる

自分は現金で購入したから融資は不要だったが、売却を考えたときに、同じように現金で買える人にしか売れないという状況になる。もし収益のあるオーナーチェンジ物件として売ることができるのであればキャピタルゲインも見込めるのに、ローンを組めない物件ならその値打ちがぐっと下がる。

問題② 登記をしたくても、非常に手間と費用がかかる

未登記部分を登記するには、その部分の実態と所有権を証明する書類をいくつも用意して土地家屋調査士に依頼する。図面も必要となってくるので権利の登記とは違い、依頼が不可欠となってくる。この所有権を証する書面には主に、「建築確認書(及び確認済み証)」「工事人からの引渡し証」「支払いが完了したことを証明する領収証」が重要だ。

他にも評価証明書や納税済証、近隣所有者の証明書、火災保険証などを添付するが、この3種類の書類がとても重要視されている。

しかし、そもそもが自ら増築したのではないからそれらの書類があるはずもない。では登記は不可能なのか?

表題部登記は現状通りを登記する義務が所有者にあるので、その申請に基づき、登記をすることは可能である。所有権を証明する書面がない分、法務局の登記官と土地家屋調査士が打ち合わせ、実地調査を行い、間違いのないことを厳密にチェックしてから登記するのである。

この実地調査には何週間もの待ち時間があるのが普通であり、資料が乏しい状況では土地家屋調査士の調査・測量にも時間がかかる。登記が完了するのには通常で3週間から1か月はかかる。費用も10万円前後はみておいたほうがいい。

このような時間と費用の関係から、未登記のまま築古の格安物件が投資用として取引されているのであろう。しかし、急がば回れで建物に手を加えた本人(売主)が登記を完了し、それを購入するのが最も賢明な選択である。最低でもこのように手間と費用が掛かることを指値などの条件に盛り込み、少しでもその未登記部分に関する資料を引き継いでおいたほうが得策である。

今回は建物に関してだけ説明したが、土地の境界確認・地積更生登記についても同様のことが言える。登記はその物件の価値を完全なものに仕上げる重要な要素である。(ZUU online 編集部)