パッと見は夫婦として生活しているにもかかわらず、自らの意志で入籍していない夫婦を「事実婚」とよんでいます。

筆者はプライベートでは事実婚をしていますが、社会保険や税金、相続、離婚、子どものことなど、よく質問されます。そこで今回は、事実婚夫婦の年金や健康保険などの社会保険、民間の生命保険などについて、クイズ形式で解説したいと思います。

健康保険・国民年金クイズ

まずは健康保険、国民年金について。下記の問題の夫婦は、夫は会社員、妻は専業主婦で、いずれも事実婚です。○か×かを考えてみてください。

Q1.妻は夫の健康保険の扶養に入ることができる

Q2.妻は国民年金第3号被保険者にあてはまるので、妻自身が年金保険料を納める必要はない

○か×か、答えは決まりましたか?

病院へ行くとき健康保険はどうなる? Q1の答え

まず、「Q1.妻は夫の健康保険の扶養に入ることができる」の答えは○です。

入籍していない事実婚夫婦も、入籍している法律婚夫婦と同じように、妻は夫の健康保険の扶養に入ることができます。そのため、出産した場合は夫の健康保険から出産育児一時金を受け取ることもできます。

老後の年金はどうなる? Q2の答え

次に「Q2.妻は国民年金第3号被保険者にあてはまるので、妻自身が年金保険料を納める必要はない」の答えですが、これも○です。

夫は会社員、妻は専業主婦の場合、法律婚夫婦と同様に、妻は国民年金の第3号被保険者になれます。そのため、自分で年金保険料を納めなくても、老後の国民年金部分を受け取ることができます。

さらには、もしも夫が亡くなったときには、妻は遺族年金をもらう権利もあります。これも法律婚と同じです。

社会保険は、籍よりも「実態」重視です!

私自身、結婚した直後の専業主婦期間と、再就職した会社を退職してから失業給付をもらうまでの3か月間、一時的にパートナーの扶養に入っていたことがあります。

その間は、病院に行くときは夫の健康保険証を持っていきましたし、(昔は、今のように1人1枚のカードタイプではなくて、紙の健康保険証に家族の名前が書いてあった)、国民年金については、夫の会社を通じて手続きを行うことで、国民年金の第3号被保険者になることができました。

先日発表された 総合婚活サービスのIBJが実施したアンケート調査 では、「入籍していないと公には夫婦でない」という理由で「事実婚は認めたくない」という意見もあったようですが、籍を入れなければ「公には夫婦ではない」ということはないのです。

社会保険は、入籍の有無ではなく、実態重視ということを知っておきましょう。

民間の保険クイズ

では、今度は民間保険会社の場合です。

ここでも登場する夫婦は、いずれも事実婚を行っている夫婦として、○か×かを考えてみてください。

Q3.自動車保険の夫婦限定割引が使える

Q4.夫が死亡した場合、妻は死亡保険金受取人になれる

答えは決まりましたか?

夫婦割引・家族割引はどうなる? Q3の答え

まずは「Q3.自動車保険の夫婦限定割引が使える」の答えですが、これは事実婚夫婦も使えますので◯です。

また、保険ではありませんが、携帯電話などの家族割引なども事実婚で使えます。携帯電話の場合は、必要な書類がありますが、自動車保険の家族限定割引は、書類なども不要のため、手間もかかりません。

なお、最近自転車事故の補償で話題になっている、人をケガさせたり、人のモノを壊してしまった時の法律上の責任をフォローしてくれる「個人(生活)賠償責任保険」の対象範囲は、「生計を一にする同居の親族」が基本です。法律婚なら問題なく補償されるのですが、事実婚の場合は、保険会社によって取り扱いが異なります。

事実婚夫婦であっても、法律婚の夫婦と同じように補償してくれる保険会社もあれば、法律上の夫婦に限る保険会社もあります。個人賠償責任保険の加入時は、対象者をしっかりと保険会社に確認しておきましょう。

夫が亡くなったとき、保険金はどうなる? Q4の答え

最後に「Q4.夫が死亡した場合、妻は死亡保険金受取人になれる」の問題ですが、この答えは「保険会社によって異なる」が正解です(意地悪な問題で失礼しました)。

実は、事実婚パートナーが死亡保険金受取人になる場合、自己申告や住民票、扶養の状況など、何らかの生活実態がわかる書類の提出があれば死亡保険金の受取人になれる保険会社と、死亡保険金受取人は、2親等以内あるいは3親等以内の親族と規定しており、事実婚夫婦では受取人になれない保険会社があります。

死亡保険に加入する場合は、商品内容や保険料だけでなく、死亡保険金受取人の規定も事前に確認するようにするとよいですね。

社会保険は実態重視、民間保険は要確認

今回は、「社会保険は実態重視、民間保険はまず確認」ということを押さえていただければと思います。

次回は、事実婚と税金や相続についてお伝えいたしますので、お楽しみに。